『君のとなり空いてますか?』

年上のお隣さん（男）に一目惚れされてしまった高校生男子のお話です。

カップリングは、「無職のお隣さん × 両親の不仲に悩む高校生」となっております。

両親の口げんかを聞きたくなくて近所の公園で時間をつぶしていた一郎は、お酒を飲みながらやってきた隣人に話しかけられ、唐突に告白されてしまいます。曰く、

「俺 君に 恋しちゃった」

とのことです。

立派な成人男性が酒に酔って高校生を口説いた挙げ句、酔い潰れかかって自宅まで送らせるとか、規制の厳しい現代社会で出るところに出たら完全にアウトな案件です。BL界はまだおおらかでよかったです。

運命の恋を主張する成人男性のお隣さん・春夏秋冬（ひととせ）と、それを信じられない高校生・一郎。

一郎は、自分の両親がまさにその「運命の恋」をして結婚して、その後すれ違って喧嘩ばかりするようになってしまったのを目の当たりにしていたこともあって、春夏秋冬の言葉を素直に聞ける状況ではないのです。

大人だけど、無職で宝くじとパチンコと競馬で生計を立てちゃうような行き当たりばったりで運任せな生活をしていて、夢は絵本作家で、早くに両親を亡くして親戚に引き取られて、妹を大学に行かせるために自分はがむしゃらに働いていた過去がある春夏秋冬。

子供っぽいところがあって、不器用で、生活は運任せの自由人で、無邪気でひたむき。全体的にとてもアンバランスな彼は、笑顔が素敵でとても魅力的です。

一郎も、自分に恋したと臆面もなく言い放つ春夏秋冬を邪険にしつつも完全に嫌うことはできず、むしろどんどん気になる存在になっていきます。そして後半。明らかになる過去の二人の出会いです。

実は昔、春夏秋冬は両親を亡くしてしばらくした頃に、幼かった一郎と出会っていたのです。一郎は自覚のないまま春夏秋冬を慰め、ずっと張りつめていた心をほぐしていたのです。名前も聞かずに別れて、恐らく二度と会うこともないだろうと思っていたら、まさかのお隣さんに……！ ということだったのですね。確かにこれは運命を感じます。

春夏秋冬の気持ちを真剣に受け止めるようになった一郎ですが、ここまできたらもう両想いまでの障害などあって泣きが如しです。

遊園地デートです。初々しくてとてもいいです。色々楽しんで最後はド定番の観覧車。春夏秋冬が子供のころ両親と来た時には改装中で乗れなかった思い出の観覧車です。その中で、ついにキスを……します！

作中初のBL的シーンです。ここですでにページ数は終盤。その後、一郎が気持ちを整理して自分の恋心を自覚して………………終わってしまいました。描き下ろしもキスまで。

なんと品行方正なBLなんでしょう……朝チュンですらありませんでした。

色々と厳しい現代社会に配慮したのか、春夏秋冬は高校生のお洋服をはぎ取るところまではいかなかったようです。紙の中でなら最後まで致してくれても私が全力で守るので遠慮しなくていいんですよ……とお伝えしたい所存です。

そう。見事な寸止め。もとい、プラトニックラブです。そういうシーンが苦手な方でもキュンとしたまま読み終えることができると思われますので、ぜひ手に取ってみてください。

最後まで期待した同士の皆様、続きは妄想で補いましょう！

©井上ナヲ/プランタン出版