2019.06.27
【インタビュー】『まちカドまぞく』伊藤いづも「子どものころの自分を満足させられるマンガ家になりたい」
「まんがタイムきららキャラット」(毎月28日発売・芳文社)で連載中の、ぽんこつ系まぞくと物理系魔法少女がおりなすマジカルコメディ『まちカドまぞく』。
「次にくるマンガ大賞」にも2年連続でノミネートされていましたが、このたび満を持してTVアニメ化が決定しました。「次に」どころか、時は来た!
コミスペ!は今回、6月27日の単行本5巻発売と、7月11日からのTVアニメ放送を記念して、作者の伊藤いづも先生にインタビューを実施。
4コママンガとしては異例の描き込み量。緻密に張り巡らされた伏線。様々な魅力を持つ『まちカドまぞく』は、いかにして生まれたのか? その秘密は、どうやら伊藤先生の小学校時代にまでさかのぼるようで……。
アニメ化が決まったとき、熱が出ました
──伊藤先生は長野県在住と聞いていたので、ダメ元でインタビューを申し込んだのですが……。ご快諾いただきまして本当にありがとうございます。
伊藤いづも先生(以下、伊藤):こちらこそ、貴重な機会をありがとうございます。ちょうど今日、アニメ第1話のアフレコ現場を見学するために上京する予定だったのでお受けすることができました(注:インタビューは、5月中旬に芳文社オフィスで実施)。
──『まちカドまぞく』のアニメ化の話が来たのはいつごろだったんでしょうか。
伊藤:桃が闇堕ちして、シャミ子の夢の中に入ってきたあたりだったかと。あそこは3巻だけでなく、物語全体のクライマックスでもあったのでよく覚えていますね。
──アニメ化が決まったとき、どんなお気持ちでしたか?
伊藤:熱が出ました(笑)。もともと『まちカドまぞく』は3巻くらいで完結させようと思っていて、そのときすでに次回作の企画を担当さんに出してたんですよ。
だけどアニメ化が決まって、もう少し連載を続けられることになって……。もちろんすごく嬉しかったですけど、こんなこともあるのかという驚きのほうが大きかったですね。気持ちの気温差が激しすぎて体調を崩すみたいな。
今明かされる!『まちカドまぞく』誕生の秘密
──昔から長野にお住まいだったんですか?
伊藤:長野に引っ越したのは、結婚してからですね。それまでは東京に住んでいました。
──『まちカドまぞく』の舞台は「せいいき桜ヶ丘」という架空の町ですが、「聖蹟桜ヶ丘」がモデルと思っていいのでしょうか。
伊藤:はい、子どものころ多摩市に住んでいたのでモデルにさせてもらいました。厳密には聖蹟桜ヶ丘ではなく唐木田や多摩センター周辺でして、作中の町並みもあのあたりの住宅街をイメージして描いています。
──『まちカドまぞく』はいわゆる「魔法少女もの」ですが、魔法少女の桃でなく魔族のシャミ子を主人公にしたのはどうしてですか?
伊藤:昔から、機会があれば魔法少女もののマンガが描きたいと思っていました。ずぼらで暴力的な魔法少女と、敵対しつつもそれをお世話しちゃう魔族の女の子のお話で、魔法少女が主人公だったんですけど。
そのアイデアを最初の打ち合わせで担当さんに話したら、「魔族の子のほうが主人公っぽいですね」って言われたんです。そこから細かい部分を煮詰めていって、第1話の原型ができあがりました。
──桃が主人公だったら、今とは違う雰囲気の作品になっていたかもしれませんね。
伊藤:構想段階の桃はもっと暴力的で、シャミ子を普通に殴ったりキュッと締め上げたりしていましたね。だけど、ネームを描いているうちにだんだんシャミ子がかわいそうになってきて、最終的にだいぶソフトなやりとりになりました。
──伊藤先生から見た主人公のシャミ子は、どんな女の子ですか?
伊藤:シャミ子はもともと、魔族とは思えないくらいがんばり屋で世話好きでお人よしという設定のキャラクターでした。仮に主人公じゃなかったとしても、そこは変わらなかったと思います。
──シャミ子は本当に優しい子ですよね。他のキャラクターも含めて、根っからの悪人がひとりもいないところも『まちカドまぞく』の魅力だと感じています。
伊藤:どのキャラクターにもそれぞれなりの信念を持たせることは、いつも意識していますね。他のキャラクターにとっては間違っているように見える行動でも、本人は正しいと思ってやっているわけで。
お互いの意見がぶつかったときに、一方的に相手を否定するのではなく、いかに話しあって妥協点を見つけて解決していけるかというのが、『まちカドまぞく』のテーマのひとつにもなっている気がします。
──2巻からの新キャラクターであるミカンは、最初から登場させる予定だったのでしょうか。
伊藤:出そうと決めたのは、連載が始まって少し経ってからです。シャミ子と桃はどちらもボケ寄りなところがあるから、ピシッとツッコミを入れてくれる子がほしいなと。まあ、今はミカンも割とボケキャラになってますけど(笑)。
──特にお気に入りのキャラクターはいますか?
伊藤:描いていて楽しいのはミカンですね。シャミ子とも桃とも違うリアクションをしてくれるキャラクターなので、セリフを考えるのが楽しいです。
ただ、一番動かしやすいのはやっぱりシャミ子でしょうか。シャミ子と作家である私の性格はぜんぜん違うのですが、物事を見聞きしたときに出てくる感想は似ているので自然とセリフが浮かんでくるんですよね。そのせいで、シャミ子ひとりがボケもツッコミもこなしてしまうことがよくあります。
©伊藤いづも/芳文社
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