2020.01.20

恋する女子番長×いじめられっ子男子の勘違いラブコメ!『パシリな僕と恋する番長さん』鹿島初【おすすめ漫画】

『パシリな僕と恋する番長さん』

本日ご紹介するのは、KADOKAWA「ヤングエースUP」で連載中の『パシリな僕と恋する番長さん』という作品。

スカジャンにゲタ履きで鉄パイプをかついだ気合バリバリの不良っ娘、その名も勇ましい番長・寅丸さん。彼女はいま、熱烈な恋をしている。相手は卯ノ木くんという男の子。見るからにナイーブで、その物腰のためか昔からいじめられやすい体質だ。

「私のモンになれ」

ある時、番長少女が勇気を出して想い人に詰めより、告白を敢行。これが受け入れられ、やった! 恋人同士だ! と大喜びで四六時中ぴったりいっしょにいるようになる。

ところがしかし!

いじめられっ子な卯ノ木くん、まさか自分が恋心でアプローチされたとは思いもよらない。じつは彼のほうは「私のモンになれ」=「自分専属の使いっ走りになれ」と命じられたように思い込んでいる。やたらと絡んでくる番長さんの機嫌が悪くならないよう一生懸命に気を配るのだが……それが番長さんにはジェントルな恋人ムーブに見えて「優しい! 好き!」と好意を上乗せさせてしまう結果になることに、彼は気づかない。

恋と恐怖を挟んだ勘違いでズレ続けるこのカップル(?)、行く末はいかに……!?

勘違いを軸に転がすコメディでは、人と人の話が噛み合わないもどかしさを(我々受け手にとって)どのようにストレスではなく楽しさに転じるかが作品の要点だ。本作の場合とにかく寅丸さんの一途で情熱的な内心描写によって、勘違いしている姿それ自体が可愛らしいものに見えるよう整えられているのが美点といえる。

さて、そうすると、読んでいてこんな矛盾した心情も生じてしまう。「勘違いが解消されて本当の意味で恋人になってほしい、けど、勘違いで空回るところももっと見ていたい……」つまり、勘違いラブコメで勘違いが消えたら話が終わってしまう問題である。

これに関して本作は、段階を作ることでうまく対処している。

いじめられっ子の卯ノ木くんはあまり親密な対人関係を得られない学校生活を送っていたのが、番長さんが彼にかまうことでそこを埋めてもらう形になる。すると、恐いのは恐いけれど感謝や敬意を抱いたり、ちょっとした愛嬌に気づいて魅力的に感じる瞬間が出てくることになる。

そうやっておおよそ44話、単行本でいうと第4巻まで、勘違いした範囲内でありうる好意をじょじょに積み上げていくのだ。

そして、ついに寅丸さんが卯ノ木くんを好きなのだという事実が卯ノ木くんに伝わる時がやってくる。例の告白がパシリ所有宣言ではなく恋心の打ち明けだったと明らかになり、はれて二人は正式なカップルに……まだならない

好意が伝わっても、寅丸さんの現状認識は「卯ノ木は今まで自分を恐い番長と思っていたのであり、自分を好きなわけではなかった」という告白時点へのリセットである。だから「これから惚れさせてやる!」と息まくことになる。

もうとっくに、卯ノ木くんは寅丸さんが好きなのに! 卯ノ木くんも間が悪く、なかなか自分の側の好意を伝えきれず、ふたりは両片思いというややこしい状態へ突入する。

すなわち、勘違いが解消されたからこそ起きる新たなズレで第2フェーズの幕開けだ。

現状では、ベースにあるのはあくまで両想いなので安心感たっぷり。少しずつ進展するふたりの関係を支える周囲の人物も掘り下げが進み、寅丸さんが担う不良というラベリングにも焦点が当たるなど、学校を舞台にした青春群像劇の趣で作品の味わいはますます深まっている。

一話完結に近いショートコメディの積み重ねが長期的に大きなドラマを生む好例といえるだろう。

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miyamo

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