2021.03.09

「正しい顔」ってなに? 女装男子と出会った女性が、メイクで自分の人生を取り戻す!『顔に泥を塗る』ヨシカズ【おすすめ漫画】

『顔に泥を塗る』

「メイク」を題材にした物語は決して少なくありませんが、今年1月に単行本の第1巻が発売された本作は、そこに込められたテーマが非常に現代的で、引き込まれます。

主人公の“美紅(みく)”は、百貨店の受付で働く25歳の女性。新米弁護士の彼氏“はる”と同棲しています。

職場の先輩からもっと大人っぽいメイクをするようにと指導を受けた翌週の朝、濃い赤色のリップを塗ってみた美紅。しかしはるからは「中学生が頑張って厚化粧したみたい」というなかなか酷い言葉を投げかけられてしまいます。

「いつものナチュラルなメイクのほうが似合う」というはるの意見に若干モヤモヤする美紅ですが、一応は納得してみせることに。

そんなことがあった日、勤務中に面倒な男性客に絡まれてしまった美紅を助けたのは、鮮やかな赤いリップが似合う美女──かと思いきや、実はこの人、女性向けのファッションを身にまとった男の子だったのです。

イヴと名乗るこの男の子は、その日の気分に合わせてメイクを決めて、ファッションもメイクに似合うものを男性向け・女性向け問わずコーディネートしているのだそう。性別による固定観念すら飛び越えて「メイクをすることでその日なりたい自分になる」という考え方に、まわりの意見をうかがいながらメイクを決めようとしていた美紅は衝撃を受けます。

「似合う色じゃなくて、好きな色を選んでみて」

そんな言葉に背中を押され、イヴによるメイクを施された美紅。目を開けると、鏡に映った自分は見違えるよう。しかし、このメイクを見たはるの反応は、背筋も凍るような恐ろしいもので……?

“誰もがなりたい自分として生きて良い”というテーマ

男性の中には“自分の好みかどうか”という尺度だけで他人のメイクの良し悪しを判断する人もいますが、誰しもが人の好みに合わせてメイクをしているわけではありません。自分の気持ちを高めるためという人もいるでしょうし、作中で描かれているように“清楚な見た目だとセクハラや痴漢の被害に遭いやすい”といった現実も、残念ながらあるようです。

とてもスリリングな物語を展開しつつも、本作には「誰もがなりたい自分として生きて良い」というテーマが根底にあるように思います。メイクに関する描写もそうですが、イヴが友人たちにセクシュアリティも女性であると誤解され、「僕の恋愛対象は女性」ときっぱり否定する描写があるのも、こうしたテーマがあるからこそではないでしょうか。

普段は柔和で優しい表情を崩さないはる。しかし美紅が自分の理想とする“清楚でおりこうさん”なイメージから離れそうになると、途端にモラハラ的な言動で美紅の気持ちを支配して抑え込もうとしてきます。美紅もまた、そんなはるの言動を「私のためを想って言ってくれてる」と思い込もうとしています。

いっぽうで、美紅の“なりたい自分”をすべて肯定し、勇気づける言葉をくれるイヴ。どうしようもなくイヴに憧れ、惹かれていく美紅には、多くの困難が待ち受けているような気がするのですが……。

これから先の展開を読むのが少し怖くもあるものの、きっと読者の背中をも押してくれるような何かを提示してくれるはず。そんな期待も抱かせてくれる、これから先が楽しみな作品です。

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この記事を書いた人

小林 白菜

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