2018.09.24

【まとめ】少女マンガの醍醐味! 「キス」がタイトルに含まれている少女マンガ!

いきなり私事で恐縮なんですが、今年娘が生まれまして、誕生日が5月23日なんですよ。
で、その日がなんの日かというと「キスの日」だっていうんですね。なんでも戦後日本で初めてキスシーンが登場する映画『はたちの青春』の封切り日が由来とされているようで。

『はたちの青春』が放映されたのは1946年。それから60年以上の時を経て、キスは当たり前のように映画やマンガの世界に溶け込むようになりました。今となっては少女マンガの象徴のような「キス」。各雑誌の連載作を眺めてみても、「キス」というワードが含まれている作品が多数あることに気付かされます。

キスの日からは時間が経ってしまいましたが、今回はキスと名の付く少女マンガをご紹介していきたいと思います。

『ラキラキス』

これは私が勝手に抱いているイメージなのですが、キスというとなんとなく「別フレ」って印象があるんですよね。で、実際に連載作を並べてみると、ある程度イメージ通りで、キスと名の付く作品が3作。みきもと凜『午前0時、キスしに来てよ』はつはる『毎日キスしていいですか?』さとる『ラキラキス』

この中で一番人気は、『近キョリ恋愛』を描いているみきもと先生の『午前0時~』でしょうか。で、キス成分一番多めなのは『毎日キスしていいですか?』ですかね。でも今回は、あえて『ラキラキス』をご紹介したい。

主人公の玉緒みりかは、生まれつきの強運の持ち主で、道を歩けば万札にあたるような超ラッキーガール。ところがある日、道端で謎のイケメン・一ノ瀬くんと事故チューをしてから、彼女は不運の連続に見舞われて……一方の一ノ瀬くんは、これまでの不運な人生が一変、幸運に恵まれるように……というストーリー。

なんとなくイメージが付くかと思いますが、超ラッキーガールと超アンラッキーボーイが出会い、その運がキスによって入れ替わるという設定のラブコメ。愛情表現として用いられるキスという行為が、本作の場合はピンチを切り抜ける際の手段として用いられるという点が、他とはちょっと違っていて面白いところ。

もちろんキスするときのためらいやドキドキはしっかりと落とし込まれており、相手を意識すればするほどに、「ただのキス」が「特別なキス」へと変わっていく過程もまた楽しい、エンタメ性の高い一作です。

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『セキララにキス』

別フレと同じ講談社の「デザート」も、キスに関してはアツい雑誌です。むしろ内容で言えば、一番充実していると言っても過言ではないかもしれません。まずは芥文絵『セキララにキス』

小さい頃にいじめられたことがきっかけで、みんなに好かれる「仮面」をかぶって生きてきた女子高生・千歳。ある日、美術予備校に通うイケメン・と出会い、その仮面を見透かされてしまいます。それをきっかけに「私、変わりたい」と、美術予備校に通うことに決めるのですが……という、美術予備校を舞台にした青春ラブストーリー。

普通の学校ではなく、美術予備校が舞台というのが本作のミソで、普通の学校行事とは違う“ならでは”のイベントが描かれるのがまず面白い。
恋愛もさることながら、ここに通う人たちはみんな志を持って通ってきているわけで、しっかりと美術の方でも真剣にぶつかり悩む描写があるのが印象的。勉強を頑張る描写ってのはどうしても退屈になりがちなのですが、それが美術に置き換わると、途端にスポ根感が強くなり、恋愛と相まって青春の数値が高まるという。

ヒロインの千歳は、なんでも見透かしてズバッと物事を言ってくる樹に対して恋心を抱くわけですが、その裏表のない真剣な人間性にやがて恋心を抱くように。
一方で美術では到底敵うレベルではなく、彼との実力差に落胆したり、焦ったりと、決して肯定的な心情だけで向き合えないところがいかにも青春という感じがして、読んでいてむずむずしてきます(良い意味で)。

このタイトルらしく、「好きだ」とか「付き合う」みたいなラインに立つ前から勢いでキスしちゃったりするのは、芸術家気質だからってことなんでしょうか。巻が進むごとにキスの回数が増えていくのもまた特徴で、青春の苦味際立つ物語は、徐々に甘みたっぷりの恋愛物語へと姿を変えていきます。

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『はじめてのキス』

そして「デザート」から紹介したいのがもう一つ。それが赤池うらら『はじめてのキス』

タイトルの通り、ファーストキスをテーマにしたオムニバス作品。この「テーマ縛りの読み切り」というのが意外と大変なんですよね。毎回テイストを変えていかないといけないですし、1話という短いページの中でキスまで持っていくというのも、なかなかのスキルが要求されます。

で、本作『はじめてのキス』1巻に収録されている4話なんですが、いずれも無理なく展開する良いストーリーで、そしてそのどれもが、余すところなくピュアっピュア。
シチュエーションがまずずるいんですよね。夕暮れのプールサイドとか、雨宿りの神社とか、部活中に二人きり会う外階段だとか、使われる場所がことごとく青春度数が高いところで、そりゃあキスまで行っちゃいますよねっていう。

こんなにピュアなラブストーリー、最近あんまり読んでこなかったなぁというぐらい、どれも純度100%。今回とりあげる作品の中では、もっともプラトニックで、もっとも恋愛にフォーカスした作品じゃないかなと思います。

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『くちうつす』

ちなみに講談社といえば「KISS」という、今回のテーマにうってつけなタイトルの雑誌が存在しますが、連載している作品を見るとキスと付くものは無し。読者層の年齢が高くなってくると、もはやキスも挨拶代わりみたいな感じになるのかもしれませんね(偏見)。

単純にタイトルだけ拾ってきたときにかろうじて近そうなのは天沢アキ『くちうつす』なんですけど、もはやキスすら超えて口移しにまで行っちゃうという。

なんて本作、実際は「口移し」ではなく、小説家が骨折してしまったため、口頭記述(口で言う内容をパソコンに打ち込んでもらう)をしてもらうっていうお話。
で、その内容が初挑戦の官能系ってところがポイントで、恋愛に奥手な小説家がイケメンの歯科医に内面をさらけ出すような文節を話すという非日常的なシチュエーションがすごく面白いんですよね。

今回の記事テーマとはずれてしまいますが、力いっぱいおすすめしたい一作なので、興味のある方はぜひ読んでみてほしいです。

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『幼なじみと、キスしたくなくない。』

さて、官能系といえば一時期過激描写で話題となった「少コミ」改め「Sho-Comi」ですよ。
作品によってはファーストキスはおろか、開始時点でヒロインが処女でないという作品(注:池山田剛『うわさの翠くん!!』)もあったりするので、さぞエロティックなキスを描いた作品があるのかな……なんて期待していたのですが、現在は連載作も比較的大人しめで、キスに関しても他社と比べて遜色ないレベル。

『幼なじみと、キスしたくなくない。』は、タイトルからも分かる通り、幼なじみとの恋模様を描いたラブコメディ。主人公のひよこはモデルを志す女の子。小さい頃はモデルとして活躍していたものの、身長が伸びずに今は落選してばかり。

そんな彼女と幼い頃から一緒なのが、両隣の家に住む幼なじみ2人。一人は運動神経抜群で活発なバスケ少年・伊輝と、お医者さんの息子で優しいメガネ男子・千紘。いつも一緒に、これからも変わらずにいられると思っていた3人ですが、高校入学と共に徐々にその関係に変化が見られ……という、三角関係なお話です。

低年齢向けの良作といった雰囲気の作品で、可愛らしい造形のキャラクターたちが、めまぐるしく表情を変えながら、テンポよく物語が転がっていきます。とにかく明るい雰囲気で、読んでいて楽しいんですよ。

それぞれに目指すべき道があり、その過程で恋が生まれ、もつれていくわけですが、意外とキスは出てきません。キスしたくなくないんですが、積極的にしたくもないって感じなのかもしれませんね。キスの成分は薄めですが、純粋に作品として面白いので今回ピックアップさせてもらいました。

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『結んで、ほどいて、キス』

「Sho-Comi」からもう少しステップアップすると「Cheese!」や「ベツコミ」へと移っていくわけですが、最後に「ベツコミ」から一作ご紹介。

結んで、ほどいて、キス。
……うん、なるほど。いや、全然わからん

ただ異様に語感が良く、ついつい口に出して言ってしまいたくなる日本語ですよね。ベツコミの作品は時折こういった高いワーディング力を発揮してくるから侮れません。

この系統としては、映画化もされた『一礼して、キス』というものがありますが、これも「礼儀正しい」ってことぐらいがわかる程度で、よくよく考えるとシチュエーションがよくわからないという点で一緒です。
 
ちなみにこれ、どういうことかと言うと、地味なヒロインがひょんなことからイケメンの同級生と知り合うのですが、その彼、実は制服のネクタイを自分で結ぶことができない。で、彼にお願いされて、以降制服のネクタイを密かに結んであげるという不思議な関係になるというストーリーから。「結んで」ってのは、ネクタイのことなんです。

ベツコミらしい、ちょっと地味めで切なさ成分多めな学園ラブストーリーで、ベツコミの流れってのは脈々と受け継がれているのだなぁと感じさせてくれる作品。

なお2巻完結ですが、1巻時点では「結んで、ほどいて、キス」のうち、「結んで」までしかしないです。キスはおろか、ほどきもしないっていう。2巻、どうやって「ほどいて、キス」するのか。巻数も多くありませんので、一気読みで結末を確かめることをオススメしたい一作です。

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というわけで以上6作をご紹介しました。少女マンガでキスといえば、個人的には『イタズラなkiss』なのですが、イタキスが連載されていた「別冊マーガレット」にはキスとタイトルに付く作品は無く、今回取り上げることはできませんでした。残念。

やはり恋愛要素が強い作品が好まれる媒体に、そういったタイトルの作品が集中している印象で、そういった読者層に対して興味を持ってもらうためには、良いキーワードなのかもしれません。

しかし今回改めて読み返してみて気づくのは、結構付き合ったりする前に、勢いのままにキスしたりしてるんですよね。少女マンガでは比較的当たり前の光景なのですが、現実世界でそれをやったら、たとえ国民的アイドルであっても書類送検されたり契約解除されたりしてしまう世の中なわけで。やはり少女マンガは夢に溢れていて最高ですね。

どっぷりと夢の世界に浸りながら、甘い甘い恋物語をお楽しみください。

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