『ホテル王はそれを我慢しない』

ホテル王です。

スーパー攻様の匂いがして手に取ったBLです。最近は世情を反映してか、庶民的だったり丁寧な暮らし系だったりな地に足の着いた作品が多い気がしますが、浮世離れした設定のぶっ飛びファンタジーな作品だって負けてはいません。ホテル王と言うからには、かなりバブリーでイケイケな攻様を期待したいところです。

カップリングは、「金髪遊び人のホテル王 × 高級ホテルのホテルマン」です。

出世のために表と裏の顔を使い分けまくって同僚からの評判はすこぶる悪い健人は、職場でのストレスを発散するために行きつけのバーで飲んでいたところ、ガラの悪い金髪の外国人に絡まれて賭けを持ちかけられます。

勝負に使ったビリヤードのゲームにことごとく負けてしまい、貴重な休みでストレスを発散するどころか上積みされ、しかも翌日職場で、そのガラの悪い外国人・アルフに職場の上司として会議に指名されてしまいます。控えめに言ってたちの悪い悪夢ですね！

何かと付きまとわれ、賭けを提案され、バイだと宣言された挙げ句に突然キスされたりと、健人の受難は続きます。

仕事中は見事にネコを被っていてオンオフの切り替えはなかなかなアルフですが、惚れた男には引く気配も見せずに押せ押せです。ねえ駆け引きってわかる？ 知ってる！？ と読んでいる側が心配になるレベルです。

とはいえ、アタックの方法は正攻法というか正面突破というか、財力にものを言わせてあれこれしたり、ホテルの最上階に監禁してどうこうしたりというのはありませんでした。絶対やると思ったのに意外です。

アルフは出来が良すぎる兄の陰に隠れてあまり親に期待されていなかったという境遇で、それなりに悩んだりやけになったりもしていたようですが、基本的には健全なメンタルの持ち主で、拗らせた感がほぼありません。登場初期はガラの悪い外国人扱いでしたが、基本的に仕事はできますし、健人も友人関係や恋人関係を拒否はするものの、徐々にアルフを意識し始めます。

全編を通してとても健全な丁々発止なやりとりが重ねられ、最終的に両想いに落ち着きました。爽やかでハッピーな読後感が味わえることと思います。

ただ、せっかくのスーパー攻様スペックなのでぜひ一度、それを有効活用していただき、どこかの番外編で大喧嘩などして、最上級スイートに恋人を監禁とかをやらかしてほしい気が致します。

©慧/KADOKAWA