『その好きほんと。』

ちょっと切ないハートフルBLです。

カップリングは、「昔の恋を引きずる男 × 素直になれない不器用な男」って帯に書いてあるんですが、どっちにも当てはまっちゃうんじゃないのかこのカップリング表記……と、読み終わってから多少の混乱をきたします。

基本的には再会BLだと思っていれば間違いないです。

始まりは高校生の時。長谷は罰ゲームで同級生の灘口に告白し、まさかのOKをもらって付き合うことになり、ひどい別れ方をしていました。罰ゲームのはずがいつの間にか好きになっていたのですが、もちろん後の祭りです。

一方の灘口も、長谷に淡い恋心を抱いていたのですが、長谷たちの罰ゲームに告白させる話を漏れ聞いてしまい、話はややこしくなります。

相手は知らないと思って告白した長谷と、罰ゲームと知りながら告白にOKを出した灘口。
罰ゲームのはずなのに灘口に惹かれてしまった長谷と、好きな気持ちを弄ばれたと思っている灘口。

こんな状態で別れてしまったあと、社会人になってから再会するとか、気まずいにもほどがあります。しかもお互いがお互い、相手のことを昇華できていないままでの再会です。

大人とはいえまだ青い28歳。これが試練でなくてなんだというのでしょう。再会後に先手を打ったのは、高校時代とは逆で灘口でした。酔った勢いでの告白です。これまた酔った勢いでOKする長谷。

2度目のお付き合いは、ぎこちない、ままごとのような恋愛ごっこでした。

お互いが、相手は本気じゃないとか、高校時代の復讐だと思いながらの付き合いです。なかなか素直になれないし、年を重ねた分、臆病にもなっています。それでも、彼らは相思相愛なのです。

この、お互いが本音で向き合って、そして相手の気持ちを信じられるようになるまでの過程がとても愛おしいのです。10年越しの恋が実っていくまでがとても丁寧に描写されており、ラストはもう2人とも可愛すぎてキュン死しそうになります。彼らの気持ちの着地点にほっとする萌心……。

この寒くなってきた季節に心がほっこりする読後感を、ぜひ味わってみてくださいね。

©たき猫背/KADOKAWA