2020.01.10

元塾講師のニート × 押しの強い女子中学生。危うさ溢れる2人の苦くて甘いラブストーリー『なごむさんとひろみちゃん』むんこ【おすすめ漫画】

なごむさんとひろみちゃん

四コマの名手・むんこ先生の新作『なごむさんとひろみちゃん』が発売されました。

元塾講師のニート×押しの強い女子中学生

安アパートのお隣さん同士である、なごむさんひろみちゃん

かたや元塾講師のニート、かたや親が不在がちな女子中学生。ひょんなことからお友達になり、ひろみちゃんはなごむさんの部屋へしょっちゅう訪ねてくるように。

「勉強教えてください。」「いいよ。国語?算数?保健体育?」

彼女に教えるのは、勉強? それとも、恋?

危うさ溢れる関係性

読んでからの率直な感想は、「なんだこの危うい物語は……。」でした。

ニートの若い男のもとに、孤独な女子中学生が通いつめる……岡田コウ先生あたりのエロ漫画によく出てきそうなシチュエーションで、ジャンルがジャンルならばここからなし崩し的にヤリまくる展開になるわけですが、さすがに全年齢向けの作品ですからそんなことしません。

というか、あの『らいかデイズ』のむんこ先生ですからね、そんな方向に持っていくわけがありません。

……と、思ってました。いやぁ、見事に裏切られましたよ。

さすがにエロ漫画にはならないんですけれども、お互い明らかに相手を男として、女として意識しており、流れからキスしちゃったり、隣同士寝ているところで悶々として自慰行為をしてしまったりと、結構過激な描写が多く描かれております。

ときに家族愛的に、ときに男女愛的に…

過激なだけならどうしようもないのですが、ちゃんと物語として機能しているのはその関係性を描く上手さゆえ。

例えばキスでいうと、いわゆる男女のキスがスタートにあるわけではなくて、寂しさを埋めるための親子的な「おやすみのキス」からスタートするんです。それが、物語の終わりの方では、がっつり男女のキスをするようになっている。

この年齢差ゆえに、ある時は親子のような兄妹のような家族的関係性で描かれ、またある時は男女としての関係性で描かれ、そのアンバランスな揺らぎが扇情的というかなんというか……。

なし崩し感がたまらない

またお互いにしっかり意識はしているし好きだし、キスだってしちゃったりするんですけれど、ひろみちゃんは押しが強いと言いつつも、常にグイグイ迫るような強さは持ち合わせておらず、核心には迫らない範囲でプッシュするといった感じ。

一方のなごむさんも、最低限の倫理観は持ち合わせているので、自ら積極的には迫りません。

なので、分かりやすく関係が進展するわけではないんです。むしろその状態をキープしようとしているようにすら映るのですが、夜の寂しさや、不意に溢れ出る相手の愛情に触れて、そのストッパーが外れてしまうという、このどうしようもない「なし崩し感」がたまらない。それがまた扇情的というかなんというか……(2回目)。

巻末に「この作品がつまり私の性癖です。」というむんこ先生のコメントがあるんですが、恋とか愛とか絆とか、そんなもんじゃなくて、確かにこれは「性癖」という言葉がもっともしっくりくる。むんこ先生のB面が存分に垣間見える、異色作、オススメです。

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