2020.01.11

少女が全裸のまま生活する光景を淡々と切り出していく、日常スケッチ的4コマ!『全裸.zip』 みやこ【おすすめ漫画】

『全裸.zip』

きらら? いや、これは赤裸々だ!

というわけで本日ご紹介するのはこちら、『全裸.zip』。もとは「まんがタイムきららミラク」2016年の連載作で、同年にニコニコ静画内のチャンネル「きららベース」で仕切りなおして2019年10月をもって完結した作品である(単行本全3巻)。

内容はまさに全裸のごとくシンプルこの上ない。家の中では必ず全裸で過ごす、ひとりの少女がいる。その少女が淡々と全裸のまま生活する光景を切り出していく日常スケッチ的な4コマである。

この少女、全裸になるのが積極的に好きだとか何かポリシーがあってヌーディストを志向しているだとか、そういうわけではない。服を着ていると意識がブラックアウトしてしまう不思議な体質だと序盤に語られるが、ともかく理由付けは二の次。ただただ全裸になり、生活する。それが本作の肝である。

全裸でお昼寝、全裸で動物とたわむれ、全裸でゴミ出し、全裸で飲み食い、全裸で電話、全裸で絵を描き、全裸でお風呂……いやお風呂は全裸でいいのか。とにかくあらゆる用事が全裸でこなされていく。

それらは、どれかひとつかふたつならイレギュラーな状況として体験した人も多い行為だろう。もしくは、例えば夜に寝る時は全裸じゃないと……という人は一定数いる。
しかし、この少女はずっと・何をするにも・基本の常態として、全裸なのだ。

また、全裸ならではの問い立てがいろいろあるのも面白み。

全裸少女が「裸だけど男装ってできるのか?」と考えてからすっとヒゲをつけて「できた」とドヤ顔してみせる一編にはトンチの天才を感じてしまったよ!

これが延々と続き、読者のほうも彼女の生活風景を追いかけるうち感覚が麻痺していくのがおそろしい。

全裸少女の全裸テリトリーは自宅内や庭、玄関先くらいまでで、学校では制服を着てクラスメイトといっしょに授業を受ける様子が合間合間に描かれる。しかし本作をいちから読んでいると、服を着て他人と交流する“社会的にあたりまえ”な状態のほうがむしろ非日常的な構図に思えてくるのだ。水着回がくると露出が減った厚着に感じる、この不思議!

かくして『全裸.zip』という、開いたらヤバいコンピュータウィルスに感染しそうなタイトルは、読んでみると全裸に対する視点や思考に影響を及ぼすという意味ではたしかにハック性の高い作品の題名にふさわしいと思うのである。

ちなみに今回この記事だけで「全裸」という単語を24回使いました。全裸!(25回目)

この記事を書いた人

miyamo

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