2020.08.21

年上ツンデレ×残念黒髪美少女が繰り広げる、どたばたラブコメディ!『末永くよろしくお願いします』池ジュン子【おすすめ漫画】

『末永くよろしくお願いします』

池ジュン子先生の新作『末永くよろしくお願いします』が良すぎました。

物憂げな黒髪ロング

何が良いって、まずこのヒロインのビジュアル見てくださいよ。もう圧倒的に白泉社。物憂げで不健康そうな白い肌に、スレンダーで黒髪ロング。そして1ページ目で唯一の肉親である父親が他界してます。これもまた白泉社「花とゆめ系」作品あるある。

黒髪ロングのヒロインというと、ちょっと前だとモリエサトシ先生、最近だとsora先生の『墜落JKと廃人教師』あたりのイメージですが、まさか池ジュン子先生がそのラインに乗ってくるとは。どちらかというとオネエかチンチクリンっていう対極のイメージだったので、まずそこにびっくり。

めちゃめちゃコメディ

ヒロインの(ひかる)は16歳の女子高生。唯一の肉親である父を亡くし、父方の親戚宅に引き取られ生活をすることになるのですが、その先で保護者として出迎えてくれたのは、新進気鋭の若手書道家葛霧清水(くずきり きよみず)。

この清水がまた白泉社的というか、野暮ったい髪に、なんといってもこの和服ですよ。クリエイターらしく、自分の仕事場には近づくなとか、俺に余計な迷惑をかけるなとか初対面で言っちゃう気難しい男です。

シチュエーションからして、傷心の女子高生と、気難しい書道家が、一つ屋根の下で互いに少しずつ心通わせていく切なく美しい物語になるのかなとか思ってたんですが、半分正解で半分はずれといった感じ。

一つ屋根の下で心通わせはするものの、時間をかけてゆっくりではなく、輝が力ずくで清水の心の扉を開くような感じ。つまるところコメディです。

残念な美人ヒロインに振り回される根は真面目な大人

まずヒロインの輝なんですが、その見た目とは裏腹にかなり「ガンガンいこうぜ」な感じで、遠慮とか物怖じとか一切せずに、清水に言いたいことを言い、したいことをしていきます。普通に舌打ちとかするし、清水のことを「豆腐メンタルの陰キャ」と言い放ったり、「若い女の子の手料理食べたいでしょう」と煽ったりと、お嬢様なんですけれど、結構ガラが悪い。

無表情でそんな言動を絶え間なくぶっこんで来るものですから、清水の「気難しいキャラ」は早々に崩壊。突っ込み役、振り回され役として、彼女に翻弄されます。

清水も口は悪いし、なかなかトガッたキャラのはずなんですけれども、輝のキャラの濃さの前ではそれらが消し飛び、結局のところ面倒見の良いお兄さんという感じに。ツンデレって形容されてるんですが、ツンな行動が一切輝に刺さっていないので、「そこまでツンデレか?」って印象です。

むしろ仕事のプレッシャーで鬱になったり、人と関わるのを避けていたりと、ツンっていうか単に真面目でネガティブな陰キャの行動って感じがして、個人的には好感。恋愛経験もさほど豊富でなさそうで、どことなく童貞感も。輝にグイグイ押し込まれていく様子を見るのが面白いです。

目指すはお嫁さん

なんやかんや面倒見の良い清水に惹かれた輝は、早々に「私 清水さんのお嫁さんになりますので」と宣言しキス。後はもう、好意をガンガンに出していきます。そう、この展開の早さは、「元々読み切りで描いていたものが好評で連載化」っていう白泉社花とゆめ系お得意のパターン。

尻すぼみの懸念もありますが、本作は大丈夫でしょう(根拠はないですが)。その展開の早さゆえ、ためし読みでも十分に本作の魅力が伝わるかと思います。

これほどまでに白泉社的要素に溢れているのに、物語としてはしっかりオリジナリティを発揮。無茶苦茶面白い作品に仕上がってます。個人的にはここ数か月で一番のヒット。末永く応援したい一作でございます。

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