『醍醐さんちの大型犬』

表紙に首輪男子がいますが、SMものでも監禁系でもないのでご安心ください。

ある雨の日の夜、ゴミ捨て場にエレキギターを抱えて落ちていた美青年をうっかり拾ってしまい、懐かれてペットとしてなら置いてやってもいいかと思った醍醐さんの仏心から始まった同居生活ラブです。

オスの大型犬と思って家に置くことにしたわけですが、醍醐さんの昔のダメ彼氏を追い払ったりもできる番犬くらいにはなっています。恋人でも友達でもない、ペットと飼い主という契約関係ですが、彼らはなかなかいい感じに暮らしていました。

カップリングは、「拾われた美青年ワンコ×料理上手なゲイの編集者」となります。大型犬タイプの攻です。

醍醐さんの仕事中はおとなしく家で待っていて、帰宅後は懐いてくる、まさに癒し系わんこ。だいたいこの手の拾われ系の男ってお金持ってないケースが多いんですが、彼は札束をばさばさと持っていました。特に仕事をしている風もないので謎です。

その謎はわりとあっさり解けました。

癒し系の大型わんことして同居していたシキというこの美青年は、実は今を時めくアマチュアバンドのボーカルだったのです！ プロデビューを目前にバンドで内紛が起こってしまい、それがトラウマになってライブで歌えなくなって逃げだしたところを、醍醐さんに拾われたのです。醍醐さんと暮らしていくうちに徐々にメンタルが回復し、歌えるようになっていったわんこ。

彼は同居人を大型わんこから、歌えるわんこへとステップアップを果たします。

醍醐さんは前のDV彼氏に軽く付きまとわれていたのですが、それを目撃したわんこは勘違いをして嫉妬心を暴発させてきます。醍醐さんはノンケのわんこに同情で抱かれるのは嫌だといいますが、わんこは既に醍醐さんに惚れています。

同居人の大型わんこは、ついに本格的に飼い主を押し倒してしまうのでした……。

彼らはそれぞれにトラウマのようなものを抱えており、一緒に生活していく中でそれを克服していきます。全体的にほのぼのした作風ですが、わんこや醍醐さんが成長していく姿もしっかり描かれており、いったん解消された同居生活からのラストまでのくだりは、なかなかのカタルシスを味わうことができます。肌色シーンは控えめですが、満足度はしっかりでした。

ちょっとミステリアスな同居BL、重すぎずストーリーもしっかりしているので、ぜひ気になったら気軽にお手に取って読んでいただければと思います！

©あめのジジ/芳文社