2020.10.24

かつて魔王と熾烈な戦いをくりひろげた勇者が、骨だけで動くアンデッドとなり再び冒険の旅に出る!『昔勇者で今は骨』内々けやき,佐伯庸介,白狼【おすすめ漫画】

『昔勇者で今は骨』

本日のピックアップは、電撃文庫刊のライトノベルを原作とするコミカライズ作品。

COMICリュウ」にて連載配信中の『昔勇者で今は骨』だ。

アルヴィス・アルバ—ス。それはかつて魔王と熾烈な戦いをくりひろげ、命を落としたと語り継がれる勇者の名。

しかしその勇者が、最終決戦の最中に瀕死の重傷を負ったさい仲間に頼んで受けた死霊術により、傷ついた肉の身を捨てて骨だけで動くアンデッドとしてよみがえり魔王を討ったという壮絶な経緯を知る者は少ない。

3年後、いまは一介のスケルトンモンスターとなった元・勇者は、ひたすら趣味のボードゲームや読書を楽しむ気ままな暮らしに耽っていた。

そんな彼のもとへ、かつての勇者パーティーのひとり、大魔導士にして王国の宰相フブルから急な連絡が入ってくる。

「いい加減働けい!」

話をきけば、あの戦いで自分に術をかけてくれた仲間、神官イザナがどこかへ姿を消してしまったという。

フブルからの強引な指示もあり、イザナの行方を探すかたわら冒険者として仕事をこなすことになったアルヴィス。最下級のランクから依頼を請け始め、行商の護衛やオークに襲われた村の解放、ダンジョン探索などさまざまな活躍をしては各地で交流をもち、勇者時代には取りこぼしていた小規模な苦難から人々を助ける日々が続いていく……。

ラストバトルまでいった勇者が改めて序盤や中盤にやるような冒険をするという意味では“つよくてニューゲーム”な趣があるファンタジー活劇だ。

そういう趣向の中で、骨になった境遇についてアルヴィス自身に悲壮感があまりなく、変わり果てた姿は素性を伏せる覆面のようなものとして活かすこともあるくらいなのが面白い。

ふだんはひょうきんな男がいざとなったらすさまじい戦いの腕前を見せる挙動や、自分をただの変わり者のアンデッドだと見なしていた相手へ有事のさいに「実は勇者でした」と打ち明けるさまなどは一種の時代劇ヒーロー然としたワクワク感がある。

そうした筋で読み進めていくと、アルヴィスが物理的な肉体だけではなく勇者時代の抽象的なしがらみも脱ぎ捨てたのがこのスケルトン姿だと感じられてくる。

それは、マンガ以外で例えるなら『紅の豚』の主人公が人をやめて豚になっている意義に通じるもの。

世界や国や人類という大きなスケールを背負ってやらなければならないことではなく、その場その場でやりたいことや関わり合いになる人を見つめた先にかたどられる素朴な心のシンボルとしての、骨。そういう見立てができるかもしれない。

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miyamo

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