『狼への嫁入り〜異種婚姻譚~』

もふもふBLで、異種族同士・同性同士の婚姻譚。人間の出番なし！ 完全なファンタジーワールドです。タイトル通り、狼族に異種族が嫁にきます。

カップリングは、「むっつり狼×強気ウサギ」。

異種間なのはともかく、肉食獣と草食獣で、大丈夫？ 狼族って普段何食べてるの？ ウサギ族は野原にいるガチウサギとは全く別ってことでOK？ と、ウサギのバックより嫁入り後の生存が心配になった次第です（大丈夫でしたのでご安心ください）。

BLでそれやっちゃうとジャンルが変わるので、ないとは思いましたが、ちょっとさすがに心配になる組み合わせではあります。

作物が不作で食糧難に陥ったウサギ族の村に、狼族が訪ねてきて、嫁にひとりもらえればこの先2年間、ずっと十分な食料を提供すると言い出したのが事の発端です。村長はずいぶん渋ったうえで了解し、困っている村人にそろって土下座された年ごろの楓は、断ることができず狼の嫁になることを了承しました。

雰囲気は完全に、飢饉で食い詰めた村が年ごろの娘を人買いに売るアレです。

始まりは悲壮で、しかも婿になる予定の狼は不愛想でそっけなくて思いやりもない感じで、楓はさらに凹みます。イヤでも逃げ帰ることもできず、祝言までに体を慣らして体質を変えるために特殊な薬を飲み、さらに物理的に後ろの穴を広げる作業までやられちゃいます。

こんなん心折れるやろ……という状況ですが、楓はわりと早い段階で不愛想な婿（予定）にブチ切れます。

「こっちが笑顔で馴染む努力してんだから、そっちも気を遣え！」と啖呵を切ります。

ウサギが！ 狼に！

それからすぐに関係が変わるわけではないのですが、少しずつ、狼の態度が軟化していきます。そのまますんなり関係がいい方向に変わって祝言に──となればよかったのですが、ファンタジーらしく大事件が起こります。

何とか乗り越えてからの、雨降って地固まるやつで、最後はしっかり両思いになってハッピーエンドです。

ファンタジーならではの萌えとハラハラドキドキが楽しめるBLとなっておりますし、かといって心臓が痛くなるほどキツイ展開もないので、ファンタジー好きさんはもちろん、普段は現代ものしか読まわい派の方もちょっと違った雰囲気のお話が読みたくなった際にはぜひ候補に入れていただければと思います！

©犬居葉菜/祥伝社