『話せば長いふたりの話 それだけの話』

THE・日常BL。
本当に、日常BLとしか言いようのないくらいの日常っぷりで、帯のアオリにも「日常BLの金字塔」って書いてありました。
日常BLです。ちなみに日常は日常でも、丁寧な暮らしBLではありません。

カップリングは、萌え系漫画家×エリートオタクリーマンという立派なオタップルです。

エリートはオタクにもリーマンにもかかっております。異業種の社会人カップルなんですが、彼ら、出会いがコミケですしお互い立派なオタクなので、ジャンルは違えど通じ合える独特の世界を生きておりまして、違う世界を生きながらうまく同居生活を続けています。

喧嘩は本格化する前に引きどころを心得ており、ルールを決めすぎないゆるい縛りで生活を成り立たせ、恋人が男であることに多少引け目を感じながらもさほど気にしすぎてもいないのほほんとしたカップルです。そんな感じで学生の頃から付き合いはじめ、かれこれ交際10年。

お互いの環境も立場も変わりますが、相変わらずゆるくラブラブで、家の契約更新とか、友達のゲイの結婚パーティーとか、ちょっとした交通事故に遭って未来が少し心配になったりとか、日常的なトラブルやイベントはありつつも、大ごとにはならずになんだかとても平和で終始のほほんとしています。

もちろんBLですので肌色シーンもちゃんとあるのですが、このジャンルでは一大イベントとして物語のクライマックスに据えられるくらいのビッグトピックスなんですが、この作品にかかるとマジで日常の一部です。もう10年も付き合ってるとそうなるよねーという倦怠期というわけでもなく、ラブラブなんですが完全に日常生活に溶け込んでいるのです。朝起きてご飯食べて仕事して風呂入ってベッドでいちゃついて寝る、みたいなナチュラルな流れとでも言いましょうか。

特に何もなくてもしたくなったからします、付き合って一緒に住んでますので。という感じです。

作品全体からあふれる安心感。萌えを意識することなく読み終えて、あれ？　ほのぼの日常漫画読んでたけどこれってBLだったっけ？　いやでも確かにBLだったなそういえば。というくらい男同士で付き合ってることへの特別な意識がなく、圧倒的なほのぼの安心感で満たされる稀有なBLです。

好きなカップルには、抱えてる問題が片付いた後にはこういう人生を歩んでほしいなあと妄想するくらいの平和さです。
心を安定させたいときに読むのに最高のBLだといえるでしょう。

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