『サキュバス＆ヒットマン』

銃で悪人の脳髄と内臓をぶちまけまくる。女悪魔と契約した少年のエログロバイオレンス復讐劇

エロ・グロ・バイオレンスは「チャンピオンRED」の華！　三拍子揃った痛快残虐アクション『サキュバス＆ヒットマン』にはバイオレンス寄りですべてがてんこ盛り。悪い奴らを悪魔の力で最悪の限りを尽くして残忍な目にあわせる復讐活劇だ。

元々は12歳だった主人公の少年。ところが母は陵辱され姉は拉致され、自身も殺されてしまう。そのとき彼のもとにやってきたのが悪魔・アルメリナ。妖艶な姿の彼女に対して、情報と暴力を提供してもらう代わりに、悪人の魂を捧げるという契約を実行。家族と自分を陵辱し殺した４人に復讐するため、たまたまそのタイミングで死んだ別の17歳の少年・蒲生翔矢（がもう・しょうや）となってヒットマン稼業を行うことになる。

雑魚悪人に対してなんのためらいも慈悲もなく、ぐっちゃぐっちゃに殺しまくっていく様が気持ちいい。モブは徹底して「殺されるためのモブ」だ。頭を吹き飛ばし腸をえぐり片っ端から屍にしていく。アルメリナたち悪魔は人間に直接干渉できないため、契約した人間が魂を刈り取る殺しの代理人になる、つまり食事提供みたいなもの。

ここで与えられる悪魔側の庇護が、それぞれのキャラクターの個性になっていて面白い。たとえば翔矢の場合は、身体能力強化、傷の再生、銃弾の強化などだ。ここはゲームのようにスキルツリー形式で殺せば殺すほどレベルアップしていく。別の契約者・鉄器奏女（てっき・かなめ）は悪魔リデルクとの契約で防弾の加護を受けており、ヤクザが集まるような現場では大活躍だ。

一方悪魔の能力だけをかすめとって使っている「違反者」がヤクザの組には多数存在する。蛇を操る能力、風の刃を飛ばす居合の達人、弾丸を金に変える錬金術。悪魔の伝承がモチーフになっている能力バトルはをどう攻略するかは、漫画的なワクワクに満ちている。

ただ能力バトルで勝利すればおしまい、という「正義」で成り立っていないのがこの作品らしいところ。悪魔側は悪人の魂を刈り取る、食い尽くすことが目的なので負けたから終了なんてことはありえない。女を犯しまくっていたヤクザの男は、地獄の豚に延々と犯されながら肉を少しずつ食われ、永遠に死ぬことができなくなる。想像以上にオーバーキルしすぎていて、読んでいて変な笑いが出てくる。

翔矢は17歳の姿で銃を振りかざしているので絵になるのだが、そもそも悪魔と契約してこの身体を動かしているのは12歳の少年だ。まだ性への興味が芽生えていないし、倫理観も育っていない。復讐への激しい憎しみでもりもり悪人を殺している彼、ところどころで年相応の純粋さ無邪気さが、おかしな方向に向いているのが垣間見える。

確かに彼らが刈る相手はどうしようもない悪人ばかり。そんな彼らを復讐達成後に尋問し殺す時、あまりに悪辣すぎる笑顔を見せる彼。どっちが悪人かわからなくなる。あるのはこちらの復讐心と、向こうの醜い欲望だけ。作品で描かれる対立関係と利害関係は極めてシンプルなので、殺し合いアクション描写は何も考えずに楽しめる。主人公側も含めてほとんどが地獄直行だろう。

この作品には唯一の良心として、おとなしくてお兄ちゃん大好きな（本来の）翔矢の妹・蒲生莉理（がもう・りり）というキャラが主要人物として登場する。翔矢の中に入って復讐をしている少年自体は全く知らない、中学生３年生。ヒットマンとしての事実を知らない莉理に対して、次第に少年も彼女が守るべき家族だという認識をしはじめる。それでいてアルメリナに煽られて、莉理に対しての性的な意識もしてしまう。血みどろな作中における一服の清涼剤のような彼女だが、もちろんこの世界にほんのちょっとだけ巻き込まれ始めている。

もし翔矢（の中の少年）が何らか次の精神的成長をするのなら、守りたいと感じた莉理との関係は非常に重要なものになりそうだ。彼が人間でいられる頼みの綱だろう。ただしそんな彼女でも、かなりギリギリなエロスを作中で見せてくれる。セクシーな悪魔たちとはまた別の、やりすぎないさじ加減のギリギリ淫靡さは、この作品ではかなり貴重。

悪いやつ（しか出てこないけど）は惨殺されるので、スプラッターでスカッとしたい人におすすめ。女の子たちはだいたいエロいめにあうのでこっちも期待してOK。今後本来の翔矢の話が出るなどして中身の少年の心理的物語が描かれるかはわからないが、このグランギニョルな爽快感は楽しみ続けたい。