2019.04.22

愛と性を真正面から捉えるダークファンタジー『亜獣譚』 江野スミ【おすすめ漫画】

設定の妙義。その愛は、種族の壁を超えるのか?

『亜獣譚』「裏サンデー」&「マンガワン」にて連載中の愛と獣のハードアクション。性交渉によって感染する、人が異形の獣と化す病「害獣病」と呼ばれる病気が蔓延する架空世界を舞台にし、性愛や差別、嗜好などの要素がてんこ盛り作品なのですが、まあ作者の変態ぶりがすごいんです。(超褒めています!!!)

性格に難ありな害獣駆除兵のアキミア・ツキヒコは害獣を追って入った森の中で、衛生兵の美女、ホシ・ソウと出会う。先天的に害獣病に耐性を持つ(最初は人間だったものの、生まれた時や死んだ時に害獣となる。実は害獣そのものは、元人間)「ヴィエドゴニャ」であるソウの弟、ホシ・チルを見逃す代わりに、アキミアはソウに結婚を迫り、関係を持ちます。しかし、アキミアも実はヴィエドゴニャであり、性交によってソウに害獣病がうつり……。アキミアとソウを中心に、愛と性をテーマに壮大なストーリーが展開していきます。

ちなみにヴィエドゴニャはスラブに伝わる、死ぬと必ず吸血鬼になる運命を持つ吸血鬼ハンターの一種だそう。

実を言うと、私のまわりには1話のハードコアなエログロっぷりに離脱した人が数人いるのですが、声を大にして言いたい「もったいない!!!」

タイトルについている「譚」とは物語の意ですが、このマンガにはその名の通り様々なストーリーの種が詰まっています。単なるエログロマンガでくくれないし、人は何をもって人なのかという哲学的な話も盛り込んでいますし、愛することとは一体どうするべきなのかも問うてきます。(だから公式の煽りテキストが「愛と獣のハードアクション」というざっくりっぷりを見せているのだと思いますが、このテキストだけだと正直なにもわからない……けど、このくらいの文字数で適切な表現もわからない!)

もちろん種族の壁と差別、政治の話なども盛り盛りで……なのに、テンポよく、話の緩急が豊かでぐいぐい世界に浸れてしまいます。

個人的には作中で出てくる「ヤッター」って足を後ろに曲げてぴょんとしてるポーズと、猫のピザまん(←名前)のセリフの使い方が毎度シュールでツボい。まだまだ要素が盛りだくさんで、これからの展開が楽しみな一作です。特に3巻からのシュペイ人の話は心にぐっときて……ぜひ読んでもらいたいです。うーん、ストーリーの幅が広すぎる! 天才!!!

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この記事を書いた人

八木 あゆみ

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