2018.02.24
【日替わりレビュー:土曜日】『路地裏バンチ』かばた松本
『路地裏バンチ』
さて、そこのあなた。
おじさんキャラやおじいさんキャラはお好きですか?
クールで渋くて不愛想、過去にワケありで周囲から恐れられる孤高のジジイはツボにハマる?
そんなイケジジイが無邪気な幼女になつかれて戸惑うギャップにときめく?
慇懃無礼で格闘が超強い老執事や、ダンディな笑顔のまま標的を無慈悲にしとめる凄腕スナイパーおじさん等々、バリエーション豊かなオッサン・ジジイばかり出てくる展開に喜ぶ?
そのジジイたちにふりまわされる、気弱だけど心優しいヘタレ青年にかわいげを感じる?
ならば!
そのすべてが詰まったマンガ『路地裏バンチ』(かばた松本/集英社)がベストマッチすることでしょう!
本作の舞台は、とある欧米風国家の片隅にある薄汚れた路地裏。
そこでは素性を隠したい者、世間に生きづらさを抱えて隠遁する者、いっときの避難先を求める者など、それぞれの事情で社会からはみ出したホームレスたちが「ねぐら」と呼ぶコミュニティを形成していた。
そんな場所へ、まだ幼い金持ちのお嬢様が興味本位で遊びにくるようになったものだからさぁ大変。
悪党を説教しようとして襲われかけるわ、おいかけてきた執事が騒ぎを起こすわで、さびれた路地裏はある意味とても華やかな空気を帯びていく。
なかでも、お嬢様になつかれて困ったのが通称「ハト」という初老の男。
自分のすべてを秘密にしているが、あふれでるタダモノでないオーラから裏通りの人々に畏怖の対象とされている人物である。
なるべく他人と関わらず静かに人生の“終わり”に浸っていた彼は、なりゆきで危機から救ったお嬢様にヒーロー認定されてまっすぐな好意を向けられ、本人の考えとは裏腹に情けのある行動をとるようになっていく。
ところが、皮肉にもそれが元・軍人としての血まみれの経歴を知る関係者を呼び込む結果となり、「ハト」は自分の過去とあらためて向き合うことに……という、アクション要素強めの人情ドラマである。
「少年ジャンプ+」のWEB連載を5話ずつまとめた単行本は今年2月に第2巻が発売されたばかりなので、いまから追いかけるのに手ごろなタイミングだ。
©かばた松本/集英社