2019.06.12
「女子力高め男子」と「男勝り女子」が繰り広げるドタバタラブコメディ!『むとうとさとう』赤塚大将【おすすめ漫画】
『むとうとさとう』
カッコイイ男になれますか? かわいい女になれますか?
運動神経抜群、学級委員でばっさりした性格、いわゆる「男勝り」な佐藤さん。昔から「女子っぽい」と言われ続けてきた武藤くんは、正反対な性格の佐藤さんから、その男らしさを学ぼうとし始める。
『むとうとさとう』は、そんな「らしさ」で困惑する思春期を描いた、ドタバタラブコメディ。
家事全般が得意でやたら気の利く武藤くんの、完全無欠な優しさ。体力があっていざという時すぐ飛び出せる、佐藤さんのかっこよさ。なるほど確かに一見真逆。
しかし「らしさ」というのは非常に曖昧な価値基準だ。一般的に言われる「男らしさ」「女らしさ」は、社会的にどう見られていたかの慣習が残ったものにすぎない。今では「男らしくしろ」「女らしくない」などを大人が言ったら、セクハラや性差別にあたる。
男女という区分でわけるのではなく、相手そのものを見ているかどうかが重要だ。武藤くんは「佐藤さんは男勝りだと思う」とズバッと言う。さすがの佐藤さんも、こう言われるとモヤッとする。しかし武藤くんは続ける。
「そこが佐藤さんのいい所だと思うし すごくカッコイイと思う 俺は好きだな」
佐藤さんは、武藤くんの行動にしばしば驚いている。人を助けるために色々なものを準備。リップクリームやハンドクリームやハンカチや裁縫道具も完備。家では休日にお菓子作り。どうしても「女子力高けー」と自分が持っていない部分に目が行く。
そこも含めて、誠実で真面目な武藤くんの魅力だ。佐藤さんが彼に惹かれているのは、「カッコイイ男」だからではない。武藤くんだから、好きなのだ。
今は「らしさ」にこだわりすぎて悩みがち。でも二人はお互い、一緒にいるのがなんとなく心地よくなりはじめている。1巻を読めば、武藤くんはもう十分かっこよくて、佐藤さんはとてもかわいいのがわかるはずだ。
「男らしい女の子」「女らしい男の子」という対比が、「武藤くん」「佐藤さん」という個の魅力に変わっていく作品だ。
©赤塚大将/集英社