2019.07.01
繊細で瑞々しい高校生同士による、キュン死上等のBLストーリー!『蛍は明日死ぬ』斉川冬【おすすめ漫画】
『蛍は明日死ぬ』
斉川冬先生のデビューコミックス。主線のない絵画チックな表紙が色っぽくてとても素敵です。
エロティックで大人っぽい表紙ですが、主人公たちは高校生です。そう。高校生同士のBLなんですよ。学園ものBLは永遠の萌えです。
好きな相手にのめりこむ攻と、好きになったらとことん相手の色に染まりたい受。とても深みにはまりそうな組み合わせです。オビを見ただけでぞくぞくしてきます。
攻の浅田は、本の登場人物「蛍」に恋をしていて、3次元の恋人にも「蛍」を求めてしまい、毎度のように振られる日々を過ごしています。
彼の恋する「蛍」は、聴色の髪に赤いピアス、猫目で口元にホクロのある、少しビッチな女性です。そう、女性なのです。浅田はゲイではありません。ただ「蛍」が好きなだけの高校生なのですが、その「蛍」好きが少々常軌を逸していただけなのです。
ある日、図書室で浅田はついに「蛍」を見つけてしまいます。聴色の髪に赤いピアス、猫目で口元にホクロのある人物──見つけた瞬間、理性は吹っ飛んでいきなりキスをかまし、言ったセリフが、
「好きです 俺のものになって」
です。普通に通報されるやつです。相手が許してくれたからセーフだっただけです。許してくれたどころか唐突なキスと告白にノータイムでOKをくれる相手でした。
脊髄反射で告白してOKをくれたその人は、二宮……男子生徒でした。外見と雰囲気だけで性別すら確認せずに「蛍」を口説いた浅田、よく今まで大きな問題を起こさずに日常生活を送ってこれたものです。
理想の彼氏を手に入れた浅田。二宮が男だろうと構わず浮かれまくってお付き合いを始めます。そして、彼に「蛍」らしさを見つけるたびに嬉しさをかみしめていきます。どんどんのめりこんでいきます。そして、いつの間にか二宮に「蛍」を重ねていたはずが、二宮本人を好きになってしまうのです。
すると今度は、「蛍」らしさのひとつであるビッチなところが気になり始めます。
一方の二宮です。彼は、ふとしたきっかけで浅田を好きになり、彼の好きな「蛍」になることで浅田と恋人関係になることができました。「蛍」として愛されていれば満足だったはずが、こちらもどんどん深みにはまっていって、二宮として愛されたくなってしまったのです。そしてついに、
「蛍は明日死ぬよ」
と言って、染めた髪を元に戻し、コンタクトを眼鏡に戻して「二宮」として浅田の前に立ちます。
「蛍」が好きで「蛍」を現実の世界に探し続けた浅田と、浅田が好きで「蛍」になりたかった二宮。物語の「蛍」を介して触れ合っていた二人は、ついにお互いをお互いとして向き合うことになったのです。黒髪・眼鏡に戻って泣きながら告白する二宮に萌えが爆発して倒れるかと思いました……。
理想と現実が交差する感じや、相手をそのひと本人として好きになっていく過程がとても繊細に描かれた作品です。仮初めの両想いが本当の両想いになっていく様を、ぜひぜひ、お楽しみください。
©斉川冬/大洋図書