『恋にならないシェアハウス』

恋にならないシェアハウス

ちょっと前に発売されていますが、望月桜先生による、『恋にならないシェアハウス』ご紹介です。

アラサーOL、真奈は仕事も恋も順調！同棲中の彼氏と結婚目前……だったはずなのに、彼氏の浮気で別れることに!!頑張ってもうまくいかない日々を変えたくて、シェアハウスに入居したものの、そこには一筋縄ではいかない面々が……!?

王道中の王道、社会人シェアハウス

テラスハウス以降、もはやド定番になりつつあるシェアハウスもの。最近は高校生が主人公の漫画ですら、下宿とか寮じゃなくて、シェアハウスに入っちゃったりしますけれど、やはり王道は社会人でしょう。

本作は社会人４人によるシェアハウスものということで、王道ドンピシャでございます。

しかも男女比は２：２。どこか空気が読めずに冷たいところのある女性・瞳子に、管理人として男性ながら家事全般を請け負う西川、人当りの良い営業職の男性・藍沢と、同居人たちはいずれも年齢も近く、タイプもバラバラ。

こんなキャラクター構成ですから、社会人らしくさぞビターでスイートな恋模様が展開されるのかと思いきや、このタイトル『恋にならないシェアハウス』ですから、さてどうしたものか。

恋にならない理由とは

別に恋愛禁止とかそういうルールがあるわけではありません。そしてみんなパートナーは無し。むしろ、恋にならないわけがないんですよ。それなのに、なんで恋にならないのか。

その要因となるのが、住民それぞれに、負の部分があるから。

例えば主人公の真奈は、失恋したてで、浮気した彼は彼女を追ってストーカー化したり、毒親がいたりと、なかなか次の恋愛に踏み込めない障壁が、自身の内外に点在しています。

また同居人も、バツイチだったり、アスペルガー症候群だったりと、それぞれ様々な理由を抱えていることが、共に生活をすることで徐々に明らかになっていきます。

ダメージが尾を引く

社会人って、こう辛いことも多いわけですけれど、恋のトキメキで甘さを補うみたいなところがあるじゃないですか。でも本作の場合、今のところ恋になっていないので、ビターな部分が強調されているというか、結構読んでいてダメージ食らう描写が多いです。

それぞれの抱える問題がやけにリアルかつ、いやーな形で発露するので、ダメージが尾を引くというか。

もちろんその後のフォローもあるのでいったんは気持ちも上がるんですけど、奥の方ではザリっとした感覚がちょっと残っているといいますか。

個人的に自己中なイケイケの親による訪問が一番「うわあああ」ってなりました。今の親世代って若いですから、全然ピンピンしてるんですよね。ありがたいことではあるのですが、人によっては、場面によっては、それが辛いときがあるわけで、形は違えど、同じような経験したことある人も多いのではないかと思うのですよ。

恋にはなると思うのですが

先の通り、同居人のうち男性は２名。家庭的で優しいタイプと、社交的で頼りがいのあるタイプという、異なるタイプのふたりですが、今のところどちらに倒れてもおかしくないかなぁという気はしています。

もちろんその時々で揺らぎはありますが、決定的なところまでは行っていないかな、と。恋にならないとは言いつつも、こんな作品ですから最後は恋になるはずで、どんな展開でどんな落としどころになるのか、なかなか想像つかず、続きが楽しみです。

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©望月桜/秋田書店