2020.02.26
熱血女教師が、性教育を限りなくリアルに語るハイテンションコメディ!『性教育120%』田滝ききき, ほとむら【おすすめ漫画】
『性教育120%』
熱血女教師、性教育を限りなくリアルに語る
性教育って、ほんとにさじ加減が難しすぎる。知らなきゃいけないことは山ほどあるのに、生々しく説明し過ぎると今度はセクハラだ不健全だと怒られる。そんなねじれた世の中をネタにしながら笑い飛ばす、やりすぎ性教育コメディがこの作品。
熱血女性体育教師の辻先生。彼女は大きな使命を感じていた。セックスについて、性について、学校は教えなさすぎなのでは? 病気を防ぐとか、避妊とか、ぼんやりと書いてはいるけれども、あまりにも教えることが少なすぎる。そもそも具体的じゃなさすぎでは?
かくして彼女は、コンドームを生徒に配るのみならず、「デンタルダム」なるアイテムを取り出し説明する。これは女性の性器や肛門を安全に舐めるためのシート。アナルから女性器に舌が移動した際に雑菌が入らない。異性愛者も同性愛者も知っておきたいスグレモノだ。
さあ、この解説を聞いて、ドン引きするか、それともとても勉強になったと受け止められるか。
全体的にコメディタッチなのは、辻先生の教え方が強引で、シモネタと性教育の境界線がぐちゃぐちゃだからだ。エロコメとして単純に痛快で楽しい。登場する生徒たちも個性的だ。BL大好き少女、女の子同士のカップル、動物マニア。視点がバラバラなので、辻先生の授業の捉え方も変わってくる。
学生たちの嗜好は違えど、共通する性行動はある。例えばオナニー。男女ともにするのに、なぜか学校ではあまり解説しない。やり方はまず教えない。みんなやってるのになんでだろう?
辻先生は果敢に解説する。清潔にする必要性、刺激の強さや弱さ、心理的リラックス感。オナニーの話をしに教室にでかい声で飛び込んでくる辻先生の行動はちょっと異常だが、言っていることは極めてまともだし、むしろ知らないことが危険なのだとすら感じる。
辻先生の奇行を楽しみつつ、いかに性教育が不足しているか、どう向き合うべきかについてかなり真剣に書いている作品。
辻先生がクレイジーで滑稽なのは、人間が性に羞恥を感じているからだ。真似したくない、と感じるのは、性が恥ずべきものだと感じているからだ。その感覚も、否定されるものではない。
それを踏まえた上で、辻先生の言動は具体的で勉強になる。確かにセックスの実践の話はとても生々しい。けれども高校生ともなれば、やってる子はもうやってる。やってなくても興味津々なお年頃だ。
なら間違う前に身体を守るのは、人生において大事なことのはず。デンタルダムはメジャーじゃないけれども、高校時代に知っていたら守られた病気もあったかもしれない。
性の間違えがちな現実を「補習」として章ごとに紹介したり、自習ルームで性教育サイトを掲載したりと、本の作りはかなり真摯。
笑いながら、性を考えるきっかけを作ってくれる、真面目な漫画。是非中高生に読んでもらいたい。
©田滝ききき,ほとむら/KADOKAWA