2020.03.16
シーソーゲームのような時差両片思いが楽しめる胸キュンBL!『あの夏の僕たちへ』吉野ルカ 【おすすめ漫画】
『あの夏の僕たちへ』
高校時代の初恋を微妙にこじらせたまま大人になっちゃった二人のお話です。
カップリングは、「部活の後輩(恋愛経験ゼロのサラリーマン)×部活の先輩(恋に疲れたクリエイター)」という感じ。
お話は、東京で恋人と破局した後、ちょっと休もうかなと田舎の実家に帰ってきた順也が、元後輩で初恋相手の優真と偶然会うところから始まります。
高校時代は、順也がはっきりと優真が好きでそれとなく誘っていたものの、優真は自分が男を相手にできるとはこれっぽっちも思っておらず、なんだか少し気になる先輩くらいの位置づけのまま終わってしまいます。
そのあと、順也から連絡は来るものの恋愛面の進展はなく、順也に恋人ができたのを機に優真から連絡を絶ってしまいます。
社会人になってからの再会をきっかけに、今度は優真が、実は順也のことが好きだったと気づきます。しかし順也は恋愛経験を積みすぎたあまりに、初恋相手である後輩のことが本当に好きなのか、それとも好みの体だから即物的に欲情しているのか、もはや自分の気持ちがわからなくなっていたのです。
優真は自分の気持ちに気付いたというのにあっけなく振られてしまいます。
この時間差両片思いともいうべき年単位のすれ違い、ものすごくもどかしいのです。
この二人のほかにもうひとり、優真の従兄弟で男の娘の少年もメインキャラとして絡んでくるのですが、この彼がふたりの緩衝材になったりキューピットになったりと、要所要所でいい仕事をしてくれます。彼も年相応の悩みや自分の嗜好のことで悩んでいるというのに、とっても良い子です。
くっつきそうでくっつかない、体の関係はあるのにはっきりした恋愛関係には踏み込めないというあいまいな状態が続いて、最後にいい感じにくっつくまでの読者の気持ちはハラハラそわそわと大変です。BLだし、最終的にはくっつくに決まっていると思いつつ振り回される感じといいましょうか。
高校時代から考えると相当時間がかかりましたが、落ち着くところに落ち着いてくれて本当に良かったと思います。つかず離れずでシーソーゲームのような時差両片思いが楽しめる作品でした。
©吉野ルカ/道玄坂書房