2020.05.01
溢れ出る有能オーラを纏いながらも、圧倒的に無能な鷹野さんが繰り広げるギャグコメディ!『無能の鷹』はんざき朝未【おすすめ漫画】
『無能の鷹』
はんざき朝未先生の『無能の鷹』第1巻が発売されました。とりあえずあらすじからご紹介。
鶸田(ひわだ)は就職活動中、ある会社の面接で見るからにデキる女性(同じく就活生)・鷹野に出会う。スマートな身のこなし、落ち着いた声、着慣れたスーツ、自信に満ちあふれているのに謙虚。縁あって一緒にその会社に入社したふたり。ただ、1年半後、彼女は社内ニートになっていた。
めちゃめちゃ出来そうな無能
一目見れば「デキる」と分かる、溢れ出る有能オーラをまとった鷹野さん。そんな彼女がなぜ1年半後に社内ニートになっているのかというと、単純に全く仕事ができないから。
社会人として働いている方であればきっと出会うこともあるであろう、「無能な人」いるじゃないですか、そんなレベルじゃないですから。
もうフィクションらしく圧倒的に無能。まず当たり前のように勉強が出来ず、漢字読めないし、専門用語を覚えることができない。何度教えたって、エクセルを使うこともままならない感じでございます。親切な先輩が根気よく指導をするも、そのすべてが水の泡。全く成長に結びつかないのです。
ただ、そんな状況を彼女自身は別に悪いと思っていないし、全然堪えていない。なぜなら仕事ができないのはわかりきっていたから。別に意図してさぼろうとしているわけでもないのです。なので実に堂々と社内ニートをしております。
仕事できなそうな有能くん
周囲の面々も匙を投げた頃、彼女と手を組んだのが、同期の鶸田。彼は鷹野とは違い、業界動向や業務知識にも長けた有能な社員なのですが、その気弱そうな見た目からどうにも実績がついてこない。
ITコンサルという立場上、クライアントからいかに信用してもらうかが勝負なのですが、初手の印象が弱すぎるのが悩みでした。
そこで、鷹野さんの登場です。彼女の有能そうに見えるオーラは半端では無く、打合せに同席しているだけで一定の信用を得られるのですよね。そんなんだから、無知ゆえの突拍子もない発言も、なんかそれっぽく聞こえてしまうという。で、そこを鶸田が上手いことフォローしたり軌道修正したりして、具体的に話を進めていくという。
彼自身が初っ端から矢面に立つ必要がないことや、お客さんだけではなく鷹野さんの面倒を見つつ進める必要があるため上手いこと気が紛れるといった効果があるようで、不思議と彼の仕事も軌道に乗り始めるのです。その過程がなんとも愉快痛快。
背景に紛れるリアリティ
私もIT業界の片隅で仕事をしているので、仕事柄ITコンサルの方にお会いしたり、一緒に仕事をする機会も多いのですが、その辺の業界特徴であるとか人材あるあるみたいなものが上手いこと取り込まれているんですよね。
鷹野というぶっ飛んだキャラは完全にフィクションの匂いを纏っていて、この作品自体もギャグコメディではあるのですが、そこで描かれる舞台が実にリアルであるがために、実際の業界を嗤う風刺的な面白さもあるんですよね。
マジで鷹野さん、浅いことしか言わないし、無能なんですけれど、周囲の面々は彼女に振り回された結果なんか「得られるものがあった…」みたいな雰囲気を醸し出したりしてるんですよね。
で、読んでいるこっちも「なんかいい話読んだな…」みたいな感じになってるんですが、冷静に考えるとこのプロセスは不要だし、別に大したことしてないので、キツネにつままれた感がすごい。なんとも不思議な、心地悪くも心地よい感覚に陥る奇作でございます。