『エジプト神の恋人』

シリアスかと思って買ったら、ギャグテイストの神話系ファンタジーBLでした！ 皆さん心を軽く、肩の力を抜いて何も考えずに読みましょう。

現代社会ではエジプト神への信仰心がほぼ失われ、観光客向けの土産物にプリントされる程度の存在感しかないと知ったエジプトの最高神ラーが、人々の信仰を取り戻すべく、調査に配下の神々を送り込む……という筋書きです。

送り込まれた神々は、地上で人間たちを相手に調査をするはずが、ことごとくファーストコンタクトした人間に惚れてベッドで裸で仲良くする仲になり、誰一人、ラーに報告を持ち帰ってきません。

アヌビス神は博物館勤務の泣き虫キュレーターに落ち、トト神はダンサーに惚れられて口説き落とされ、メジェド神はピラミッドの発掘者を誑かそうとして逆に落ちてしまいます。

もちろんBLなので全員のお相手はもれなく男性です。エジプトって同性相手でもOKだったかよく思い出せなかったのですが、概して多神教の宗教はそのへん割とおおらかなのでたぶんOKなんでしょう。神様が人間相手に攻めたり受けたりと、恋を謳歌してくれます。

最後、ラスボスとしてラーも人間界に降りてきて誰かと恋に落ちるのかと思っていましたが、アヌビス神の恋をちょっと助けるいい奴の役をやっただけれ終わってしまいました。彼にも素敵な人間の恋人（男）ができるといいなと思います。

結局、人間への信仰が云々という高尚な目的は立ち消えてしまった気がしますが、数千年ぶりに人間と交わった神様たちが楽しそうなので、これはこれでいいのではないかなと思います。信仰はどうかわかりませんが、古代エジプト関連の研究者はたくさんいますし、忘れられて消えていく心配はしなくていいはずなので、心おきなく個人（個神？）として恋を楽しんでいただければ良いのではないでしょうか。

筋書きからも察していただけるように、ライトに楽しめる作品となっておりますので、構えて読むと逆にびっくりします。オビに「灼熱のエジプト神BL」とか書いちゃうからシリアスなの？ と思い違いをしてしまうんじゃないかと愚考する次第です。

個人的には最高神ラーの灼熱の恋が読んでみたいので、ぜひ1冊かけて飛び切りのやつを読ませてほしいです。

©町子/双葉社