2020.08.14
社会人と大学生の狭間で、思い悩み振り回されるアラサー女子のキャンパスライフラブ!『未成年ごっこ』フクシマハルカ【おすすめ漫画】
『未成年ごっこ』
フクシマハルカ先生の新作『未成年ごっこ』の第1巻がちょっと前に発売されています。単行本のレーベルは「ベツコミ」ですが、掲載誌は「&フラワー」。
「&フラワー」というのは、「Sho-Comi」、「Cheese!」、「ベツコミ」の3誌が結集し生まれたデジタル少女マンガ誌で、純愛もセクシーも、学生も社会人も、ファンタジーも何でもありと、かなり幅広い作品が掲載されています。一番人気があるのは『Bite Maker』あたりになるんですが、聞いたことありますかね? しかしこんなタイトルなのに、「flowers」は参画してないっていう。
さてのっけから脱線してしまいましたが、『未成年ごっこ』ですよ。“未成年ごっこ”ってなんだって話ですが、ヒロインが未成年のふりをするってお話でございます。
主人公の内藤理科は、大学1年生。保育士になるべく、日々勉強に励む毎日です。周りとちょっと違うのは、年齢が29歳だということ。
実は社会人として働いていたのですが、会社が倒産し、もう一度夢を追いかけてみようと大学に再入学。一括で学費を支払ったため極貧状態で、18歳と年齢詐称をして、未成年限定の激安アパートに住んでいるのでした。だから「未成年ごっこ」というわけ。
ヒロインの内藤さん、29歳彼氏ナシ、アラサー処女でございます。地味で真面目を絵に描いたような女性。ゆえに10歳も年下の大学生たちのノリにもついていけるわけはなく、気後れしがちという。
中でも苦手なのが、クラスでも取り分け明るくチャラくて奔放な男子・鹿嶋くん。不真面目というわけではありませんが、その枠に収まらない感じや、一発で自分のことを処女だと当ててくる鋭さなどが、どうにも苦手。ところがある日、彼のバイト先と知らず居酒屋で深酒をしたことがきっかけで、年齢詐称の秘密がバレてしまい、以来何かと理科に構ってくるように。
この鹿嶋くん、秘密を握ったからそれをダシにこき使ってやろう……みたいな感じではないのです。例えばパソコンが使えないので、レポートの口述筆記をして欲しいとか、そういうお願いをしたりする。
理科の方が当然弱みを握られていると思うから従うわけですけれど、彼の見通しの甘さとか幼さみたいなところが我慢ならず、ついつい余計な一言を言ってしまったりするわけです。そうすると、鹿嶋くんの方はその言葉に感銘を受けたり、ショックを受けたり、一方で全然聞く耳持たず振り回したり、なんとも心情が読みにくい。
とりあえず悪い奴じゃないんでしょうけど、その有り余る自由さゆえに掴みにくいんですよね。期待したら全然動いてくれないし、かと思えば全く思っていないタイミングで、とんでもなく素敵なことをしてくれたり。
その様は男女の恋模様とも、友情とも、親と子とも言えない不思議な関係性で、一番しっくりくるのは元気が有り余ってるペットと飼い主みたいな感じでしょうか。年齢や人生経験から、年上としてコントロールしたいのに、全然御しきれてないっていう。これがどんな形で恋愛へと変貌していくのか、想像しただけでも面白そうです。
社会人と大学生の狭間で、思い悩み振り回されるアラサー女子の悲哀を、一緒に笑おうじゃありませんか。
©フクシマハルカ/小学館