『キミのこと喰べていーい？』

女の子に食べられるのって、こんなにも気持ちいい

「食べる」って、見方によってはとても性的だ。自分の身体に何かを意図的に入れる、なんて他には性行為か医療行為の時くらいしかない。ぬるぬるとした舌で大切なものを口に入れたい欲求って、とてつもない快感なんじゃないか。

宙崎臣（そらさき・おみ）の学校に転校してきたのは、元気で明るい少女、自称もぐ。なぜか名前を知られていた臣は、放課後２人きりで話したいと彼女に誘われる。

告白じゃないかとドキドキする臣。しかし彼女が服を緩めながら口を開いて言ったのは、「おなかすいた」。制服をまくりあげたとき、彼女の腹には巨大な口がついていた。臣の身体を長い舌が襲う。

「キミのこと喰べていーい？」

もぐの捕食シーンはぬらぬらしたエロティックとグロテスクが入り混じっており、最終的には強烈なエロティシズムがキャラを覆い尽くしていくような描写になっている。ぼりぼり貪るわけじゃなく、臣の身体をつやつやした舌が舐め回すようなスタイルだ。

決して殺して飲み込もうとはしていない。もぐは臣を口にしている最中は、顔を紅潮させてとても美味しそうに身体を震わせ、吐息をもらしながら、恍惚としている。一方でもぐの舌に巻き付かれている臣も、うっすらとした恐怖感を感じつつも抗いがたい快感に襲われ、身体が動かなくなってしまう。

もぐはあらゆるものをもりもり食べる。しかしどれだけ食べても満足できないらしい。そんな時に臣を舌で舐め回すと満足できるらしい。ベッドに入って寝ているもぐが、臣の手をとって自分の腹の口に入れるシーンがある。

描かれているのは「ぬる」という擬音と、赤面する２人の様子だけだ。２人そのまま眠ってしまう、満たされた描写がとても心地良い。

直接的には食欲が中心に描かれているものの、もぐが臣を口に入れることで満たされる感覚はもうちょっと別のものだ。そもそも物理的には臣を一ミリも食べてはいない。捕食によってお互いが満たされる艶めかしい快感の様子を見ていると、限りなく性欲に近い表現にも見えてくるが、もぐの行動や欲求を見ていると一概に言い切っていいものでもなさそうだ。

序盤はもぐの強烈なエロティシズムがメインだが、途中から幼馴染で臣のことが大好きな漆畑真奈（うるしばた・まな）が登場し、軽快なラブコメディとしての面白さも見せてくれる。

「yummy yummy in my tummy」という英語タイトルもとてもキュート。豊満で天真爛漫で腹ペコなヒロインもぐの、捕食以外のはちきれんばかりの魅力も是非楽しんでほしい。

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©熨斗目ナオ/講談社