2020.09.27

コンプレックスの声を武器にバンドと共に成長していくラブストーリー!『君の歌声にキスを』薫原好江【おすすめ漫画】

『君の歌声にキスを』

薫原好江先生の『君の歌声にキスを』の第1巻が発売されました。表紙からもわかる通り、音楽ものでございます。

物語の主人公・華音は、好きな男の子に”声が変”だとフラれて以来、声がコンプレックスで引っ込み思案な性格に。声を出したくないので、会話すらもまともにできず、大学でも孤立しがちでした。

そんなある日、彼女の前に現れたのは、人気ロックバンドのギタリスト・一星。口ずさんでいた彼女の歌声に惚れたと、一緒に音楽をやろうと誘われるのですが……というストーリー。

コンプレックスを武器に

なんで人気ロックバンドのギタリストが突然目の前に現れるんだって話ですが、ヒロイン・華音の父が有名なロックバンドのボーカルで、彼の家を訪ねてやってきたところ、偶然華音の歌声を耳にしたという経緯。

人気ロックバンドと言いつつも、数年前、人気絶頂のさなかにボーカルが事故で他界。以降バンドは活動休止という状態でした。そんなところ、白羽の矢が立ったのが、華音というわけ。

しかし華音は人前で歌うのはおろか、会話すらもおぼつかない状態で、到底ボーカルなんてできそうにありません。当然最初は断固拒否し続けるわけですが、一星の「僕は好きだよ 君の声」という言葉に勇気づけられ、歌うことを決意。コンプレックスだったその声を武器に、新たな道を進み始めることになります。

マネタイズの仕方が現代的

バンドメンバーはヒロイン以外全員武道館経験者ですから、実力は折り紙付き。加えてギターの一星はイケメンで未だ人気は衰えず。ゆえにボーカルさえハマれば、スターダムへの道は約束されていると言っても過言ではありません。

なので、物語としてのフォーカスは、自ずとヒロインの成長と、コンプレックスからの脱却という点にあたってきます。

一昔前であれば、まずはライブハウスで場数を踏んで……というのが定番ですが、そこは時代も変わってきてますね。彼らは華音が人前で唄えないという点を考慮して、顔を隠して動画サイトに楽曲を投稿。それもオリジナルではなく、人気曲のカバーでまずは話題を集めるというマネタイズの仕方をするんですよね。

この辺は実に現代的というか。『ギヴン』だって『空電の姫君』だって、ゆる4コマの『ぼっち・ざ・ろっく!』でさえ、バンドといえば主戦場はライブハウスなわけですよ。それが、本作はそこをまずは通らない。

もちろん物語が進めばそこも通っていくのでしょうが、バンドメンバーの実力を考慮すれば、そんなところはぴょんと飛び越えて、もっと大きな舞台で戦っていくんだろうなぁ……と今から想像できてしまうぐらいには、売れそう感がすごい。

バンドと恋は苦しんでなんぼじゃないですか

なので、いわゆるバンドの成長譚を期待するとちょっと肩すかしを食らうかもしれません。成長するのはバンドではなく、ボーカル/ヒロイン。そして何より描きたいのは、バンド・ラブ、すなわち恋愛でございます。結構びっくりするぐらい早い段階で恋が動くんですけど、こっちの展開は全然読めないんですよね。バンド以上に順調に行っちゃうそう感。

でもバンドも恋も、苦労を重ねて花開くからこそ良いんじゃないですか。ということで、ここからどう難儀な道に仕立て上げるのか、作者さんの手腕に要注目です。

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いづき

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