2020.09.26
とにかくかわいいスライムを愛でるプニプニコメディ!『スライムライフ』メガサワラ【おすすめ漫画】
『スライムライフ』
ファンタジー・SFに怪物としてのスライムが定着して幾時代も経っている。
アメーバを思わせる不定形状によって攻撃を無効化しつつ人間にへばりついて捕食する難敵の場合もあれば、棒きれ1本で倒せる雑魚の場合もあり、その設定の可能性はたいへん幅広い。
とくに1980年代以降の日本では『ドラゴンクエスト』を代表格にマスコット的な造形を施すケースも出ており、プルプルしたゼリーのような透明感と弾力感がうりのキュートなスライムを見る機会がある。
今回はそちらの方向性をたっぷり楽しめるものとして、集英社「ジャンプ+」で2017年8月から連載中のWebマンガ『スライムライフ』を紹介しよう。
本作の舞台は、魔法や精霊の存在するファンタジー世界。
高名な魔道士の家系に生まれた黒魔道士の女性・ダルルは魔法用品店を営むにあたり、従業員となる魔物を送るよう派遣会社へ依頼を出していた。
ところが、やってきたのは低レベルで特技もない、ただのスライム一匹。やる気はあるようだが使えない。送り返そうとしたダルルだが、そのスライムと向かい合ってフリーズしてしまう。
「スライムです!! がんばります!!!」
(…かわいいな)
そう、かわいいのである。
まるまるとしたフォルムに、ぷにぷにした手触り。何事にも一生懸命なのでミスの多いドジっ子ぶりはむしろチャームポイントとなり、純真無垢な性格とあいまって誰しも親しみを抱かずにはいられない。
プライドの高さゆえに言動がキツめなダルルも、この愛嬌のかたまりのような存在を前にしてはたまらずメロメロになってしまう。しゃべってよし、眺めてよし、抱きしめてよし。おはようからおやすみまでスライムに癒される、多幸感いっぱいの生活が幕開けた……!
という具合に、とにかくかわいいスライムを愛でるという一点に極振りした内容になっている。
時には他の強力な魔物と関わって泣かせる回がきたり、マスターであるダルルにまつわる人間関係も展開したりはするが、すべてはスライム君の真っ直ぐなふるまいに登場人物たちが心を許すさまを軸としてブレることがない。2020年9月現在すでに280話台まで回を重ねて、作品世界を拡げながら同時に安定し続ける組み立てがお見事だ。
本作を読むにあたっては、話数が進むごとに、スライム君のかわいさが単なる柔弱さではなく力とは別の強さを発揮したもののように感じられてくるところに着目してほしい(実際、彼の友達作りがある種の秀でた才能であるというのは劇中でも示唆される)。
あどけない子供がキリっとした顔で意気込んでお手伝いに励むけなげな姿を見守るような気持ちを、たえまなく味わえる作品としておすすめしたい。
©メガサワラ/集英社