2020.10.14
「異世界転移」を題材にディスコミュニケーションの歯がゆさを描く、かわいすぎる魔王との言葉なきほんわかコメディ!『魔王様に召喚されたけど言葉が通じない。』うたしま【おすすめ漫画】
『魔王様に召喚されたけど言葉が通じない。』
異世界で言葉が通じないからこそ、少女魔王様がこんなにもかわいい
異世界転移したものの、タイトル通りその先で言葉が通じなかったらと考えるとゾッとするものがある……いや違う、言葉が通じないのが普通では!? 「異世界転移」を題材にディスコミュニケーションの歯がゆさを描く、かわいすぎる魔王との言葉なきほんわかコメディの登場だ。
インドア派のレンは朝目を覚ますと、角が生えた紫髪の美少女の作った魔法陣の中に居たことに気づく。オタクの彼はすぐさま「異世界モノ」の世界にいると理解はするものの、相手の女の子の言うことが一言もわからない。こちらの言葉も何も通じない。2人、絶望。
レンは女の子が魔王であることに気づく。彼女はレンに大きな肉料理を用意したり頭を撫でたり一緒にお風呂に入ったりと、とことん可愛がる。なぜここまでやたらと愛されるのか、そもそもなぜ呼ばれたのかも定かではないが、家族のようなペットのような、レンと魔王マリィのほんわか生活が始まる。
異世界モノの面白さは文化のギャップにある。主人公が現実世界の知識で尺度をはかっているときに、異世界ではそのルールに噛み合わない出来事が起こるからこそ、翻弄もされるし、チート的解決もできる。
しかしそれらは言葉が通じるから成り立つものだ。異世界の言語ルールはその作品の物語ごとに決まっているだろう。今回は「魔王に急に召喚された」という流れのため、何一つ言語が通じない。
主人公が異世界で、自身の現実世界の知識を用いて有利な動きをする作品の場合、言語は必須だ。しかしこの作品だと、レンが異世界で現実の知識を使って有利を取る行動は何一つない。一応見た目少女の魔王マリィに対して、年上男子っぽく気遣いをして接しているものの、彼の立場はほとんどペットだ。
「美少女に飼われて甘い生活を送りたい」作品だと考えると、種族の違いと言語の通じなさはぴったりのエッセンスになる。マリィはレンのことを気に入っておりたくさん接触してくるのだが、言葉での意思疎通ができないので、表情での感情表現が主になる。これがレン目線でみるとめちゃくちゃにかわいい。
肉料理をレンに食べさせる時、不安がっていたレンの顔を見てマリィはまず毒味をする。その食べかけを天真爛漫な笑顔でレンに差し出してくる。かわいい。一方レンが包丁を持って料理をしようとし始めたところ、マリィは青ざめた顔で彼の包丁を叩き落とす。心配なのだろう首をブンブン振って、泣きそうな顔でレンの顔を見上げる。かわいい。
現時点でもまだまだ言葉は通じない。マンガ内の発言もほとんどがレンのもの。でも話が進むほどに、セリフの有無はどうでもよくなってくる。レンとマリィの意志は疎通できはじめているからだ。むしろ上辺の言葉で伝え合うよりも、はるかに通じ合い始めているかのようにすら見える。
考えてみたらペットは言葉通じなくても意思疎通できるし、立派な家族でもある。マリィがレンをどう見ているかはわからないけれども、だからこそ彼女のことが気になるし、愛しさも増すというものだ。
©うたしま/フレックスコミックス