『クラスメイトの田中さんはすごく怖い』

目つきが悪くて怖がられている女の子の、切なくて歯がゆい恋心

Twitterで大バズリし連載になったマンガは、多くの人の心を一瞬で掴んだだけあって、結晶のごとく洗練されたときめきを与えてくれる。この作品もTwitterで多数の人を虜にしたマンガの一つ。作者の力量は表紙の引力を見ただけで伝わるはずだ。目つきの悪い近づきづらい女の子は、かわいいのだ。

クラスメイトの田中さんは、口数が少なく眼力が強い女の子。

ちょっと近づいただけでもギロリと視線を向けてくるため「眼力だけで人を殺めたことがあるとかないとか…」と噂されるほど。当然のように生徒たちは誰も近づかない。

隣の席になった少年・中島は彼女の素っ気なさに怯えていた。しかし話しかけてみると、睨みつけながらも言葉を返してくれる。顔は怖いけれども、彼女の本質に触れた気がした彼は、田中さんに対して「面白い子」「変わった子」と他の人と違う感想を持つようになりはじめる。

「怖い」というのがいわゆるヤンキー型やギャル型ではなく、仏頂面スタイルなのが見どころのひとつだ。彼女の姿は地味であるがゆえに、どちらかというと「謎めいている」という表現の方が近い。斜めに切った前髪も、性格の読めなさに拍車をかけている。

これによって「怖い」と冠されているものの、スクールカースト的な不安感や人間関係のこじれが作品に一切ないため、すっきりと田中さんのかわいらしさに焦点を当てることに成功している。

コミュニケーションが極度に苦手な彼女の不器用な心理を、中島だけが理解していく展開、そして中島への田中さんの秘めたる思い。どの回を切り取ってもときめき要素満載。４ページのショートショートでラブコメのツボをしっかり掴んでくる。

基本すっきりと笑いとニヤニヤを詰め込んでくるこの作品、雨の日を描いた第９話はかなりがっちりと思春期恋愛模様を描いており、とてもエモーショナル。２人の関係の緩急もこの作品の魅力のひとつだ。

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©やすしげ/KADOKAWA