2020.11.18

死なないヒットマンと幼い少女を巡って繰り広げられる、錬金術任侠ハードアクション!『錬金ブライカン』宝依図【おすすめ漫画】

『錬金ブライカン』

死なない男と幼い少女の錬金術任侠ハードアクション

無骨な男と小さくて可憐な少女の組み合わせは、人間の本能レベルで刻まれているんじゃないかというくらいに、物語において多大な可能性を秘めた魅力的な構造。ビジュアルのコントラストはもちろん、守るもの守られるものの共闘の図が脳裏に浮かぶだけでワクワクしてくる。

任侠+錬金術+少女のハードコアアクション開幕だ。

氷﨑柊炉(ひょうざき・ひいろ)はヤクザ事務所「緋火組」のヒットマン。表情を何一つ変えず淡々と標的を殺害していく凄腕の殺し屋だ。彼の最大の武器は、死なないこと。

彼が依頼された標的の元に行くと、そこには一人の少女が入っているスーツケースがあった。標的を殺しても顔色を全く変えなかった彼の顔がゆらぐ。そこにいた少女・緋火紅(あけび・くれない)は、かつて自分が殺した大切な人間だったからだ。

紅を奪おうとするヤクザたち。身体を張って守ろうとする氷崎。記憶を失っていた紅は血みどろな世界の中、氷崎とともに戦うことを誓う。

ヤクザ抗争に錬金術を混ぜ込んだシッチャカメッチャカ感が痛快。丸腰でも簡単に武器を錬成して相手をぶっ殺せるのだから、警戒できるかどうかの問題じゃない。

頭を撃ち抜いたり腕をもぎ取ったりするのが簡単な世界だからこそ、氷崎の不死が強力なものとして映えてくる。首を吹き飛ばされるシーンで、氷崎が自らの首をリサイクルし復活、過去の首から散弾銃を錬成して脳漿の銃弾をぶっ放す様子には、理屈を越えたかっこよさと、自身を粗末に投げ捨てるやりきれなさがある。

現実社会に錬金術を持ち込んで悪用したら、というIFも楽しい。違法風俗をやっている部下の店は、女性と動物を組み合わせたキメラが売り物。アングラな場所だけに金の回りはいいが、失敗作を次々生み出して人権を奪っているのもしっかり描かれており、ろくな人間が出てこないのがよくわかる。

紅はその錬金の力を手に入れる鍵、自我を持った「賢者の石」

ヤクザの誰もが彼女を欲する中、守ろうとするのは氷崎一人だけ。どこに行っても周囲敵しかいない追い詰められた状態がスタート地点。しかし絶望的な空気感は全くない。死なない氷崎がターミネーターのごとき屈強さを誇っているのと同時に、紅の精神が非常に強靭だからだ。

なぜ殺した紅が生きているのか、再会するまでに何があったのかは、一巻時点では全くわかっていない。ただ真っ正直な氷崎の「紅を守りたい」という思いと、紅の「奪われた時間を取り戻したい」という主張だけは一切ぶれない。

ネガティブになる氷崎を紅が奮い立たせるシーンは、少女と大人男子マンガのおいしいところがぎゅっと詰まっている。小さい女の子は、成人男子の弱いところを映す鏡として描かれる事が多い。紅が言葉でしっかり向き合ってくるほどに、無敵な氷崎の弱点が顕にされ、乗り越えねばならない問題も見えてくる。2人いれば弱点を潰してさらに強くなれるということだ。

とある理由で大人びている紅。おそらく守る守られるというよりもバディ物として続いていきそうだ。

いかんせん錬金術を使うヤクザたちにまともな人間がほとんどいないため、氷崎はこの先何度も死ぬことが予想される。最後には勝つだろうという信頼を起きつつ、どんなめちゃくちゃな死に方をするのかすら、想像していて楽しい作品だ。

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