2020.12.02
小学二年生の少年とロボット少女の淡い関係を描いた、ロボットフェチズムいっぱいの初恋ストーリー!『ヒメカに、僕は。』新貝田鉄也郎【おすすめ漫画】
『ヒメカに、僕は。』
小学二年生の少年とロボット少女の淡い関係
かつて成人漫画で多くの人の性癖をかき乱し、昨今は一般誌で改造手術を受けた幼稚園児を描いた「怪人ようちえん」でキュートにこじれた性癖を描いている新貝田鉄也郎先生。幼いエロティシズムとロボット・怪獣の特撮センスが入り乱れる描写スタイルに熱狂的なファンは多い。
今回はロボットの小学二年生がメインヒロイン……いやヒロインなのか?
そもそもボディの形状だけで女性と分類してもいいのか? だがかわいい。小学二年生の男子の前に彼女が現れたら、色んなものがこじれても仕方がない。それもまた大切な成長、と手を差し伸べてくれる作品だ。
不登校気味だった小学生のリタは、クラスに通っているロボットのヒメカに興味があって、学校に通うようになった。ヒメカは会話等はほぼ人間と変わらず交わせるものの、見た目は露骨にメカメカしい。
彼女の通う学校では平等教育が行き届いているのが興味深い。ロボットだからといって差別してはいけないと子どもたちはしっかり理解しており、ヒメカを自分たちと対等の存在として受け止め、仲良くしている。女子はみんなヒメカのことが大好きで、普通に友達として接している。
「先生が言ってたでしょーヒメカちゃんは私たちと同じ友達だって」
そんな中主人公のリタだけが、疑問を抱く。
「同じじゃないだろどう見ても……。──どこが同じなんだ。」「ロボットの方がいいじゃないか。僕はロボットの方が…──。」
平等教育が行き届いたクラスは本当にあたたかく、全編に渡ってヒメカのまわりは幸せに満ちている。しかしリタが考えるようにロボットであることは個性でもある。そこを完全に蓋をしてフラットにするだけでなく、ロボットだから好き、という気持ちがあってもいいはずだ。
学校生活ひととおりは人間と変わらないヒメコ。しかし感情があるかどうかは他の人にはわからない。神社にみんなで参拝をしたとしても、マネをしているだけなのか、本当に願い事があるのかは見てもわからない。
この作品ではヒメカのAIの仕組みなどにはそこまで踏み込まない。大事なのはリタがどうヒメカのことを見ているか、どんな感情を抱いたか、という一人称の部分だ。ヒメカへの好意を持ったリタの自我の発達物語として作品はつづられていく。
リタはかなりはっきりと自分のロボットフェチズムを理解している。
「ここが動くぞ!っていう関節も。ピカピカでつるつるの肌も。あの お面のように変わらない表情も。」
その感覚を作品は一切否定しないし、かといって煽ることもしない。好きなものは好きでいい。魅力的だと感じて見続けてもいい。少年が彼女への感情をどう自ら捉えるかが一番重要だ。
ヒメカの姿を見て、某ニチアサの戦隊に出てきた中華デザインなロボット美少女を思い出した人もいるかもしれない。実はそのキャラクターデザインを行ったのは新貝田鉄也郎先生本人。彼女を見て性癖が大変になった当時の少年は確実にいたと思われる有名なキャラだ。
そんな彼女を知っている人なら感涙モノのシーンも後半にある(直接は関係ない)。テレビ番組で歪んだ性癖は悪いものじゃない、案外素敵なノスタルジーになるものだ。
©新貝田鉄也marusi-/集英社