2020.12.12

ナメてたおばあさんが実は最強バトルキャラだった!? 愉快痛快なアクションエンタメ!『殺し屋は今日もBBAを殺せない。』 芳明慧【おすすめ漫画】

『殺し屋は今日もBBAを殺せない。』

「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした映画」こと「ナーメテーター映画」というフレーズがある。

一般人として穏やかに暮らす主人公が悪漢に襲われたのをきっかけに、実は凄腕の元・〇〇〇(殺し屋、CIAエージェント、特殊部隊員など)だった過去を明らかにして自分をナメていた敵を撃退する。そんなアクション映画の鉄板ジャンルを説明するため、映画ライター・ギンティ小林氏が生み出した形容だ。

今回は、まさにその「ナーメテーター」型の楽しさをぎゅっと凝縮した作品を紹介しよう。ナメてたおばあさんが実は最強バトルキャラだったマンガ、その名も『殺し屋は今日もBBAを殺せない。』だ。

主人公・野沢マコト。77歳。身長160cm未満のやせ型。狭い家に独り暮らしで、好物のカレーライスをしょっちゅう食べているのがご愛敬。ぱっと見はちょっとガンコそうなだけで変哲ない、ご近所によくいるおばあさんの一人である。

ところが、彼女をとりまく状況は異様というほかない。なぜか裏社会のとある組織が、この老婆たったひとりに対して5000万円の高額報酬をエサに殺し屋たちを次々と送り込み、命を狙ってくるのだ。

……いや、本当に異様というべきはその先だろう。送り込まれた殺し屋はいつも、あっという間にマコトばあさんに返り討ちにあってしまうのだ。

忍者めいた体術で不意打ちを狙った殺し屋は超人的な身のこなしで回避され、屋根の上までひとっとびの脚力で逆に追いまわされる。
300m離れた位置から狙いを定めたスナイパーは一瞬で背後へ回り込まれる(どうやって!?)。
重装備の傭兵チームが家へ突入するも一人ずつ捕まってあえなく全滅……。

という具合に、「ただのババアを殺るだけの依頼か、なんて簡単な」とナメてた連中にとっては最悪なホラー、読者にとっては愉快痛快なアクションエンタメが毎回いろいろな趣向をこらして描かれていく。

外見的にはただのおばあさんのまま、敵を前にするとすさまじいプレッシャーを放つ強キャラ演出をのせた図はカッコよさと可笑しさが同時に極まってクセになることうけあいだ。

老人が強い、というシチュだけならマンガに限らず古今東西けっこうあるのだが、「高齢女性が」という主語になるとまだ希少な部類。

アクション映画ファンの間では老婆が格闘したり銃をぶっぱなしたりするシーンを含む映画にフェティッシュな評価を加える向きがあるが、このマンガではシーン単位どころか全体通して出づっぱりの主人公がおばあさんで殴る蹴る走る跳ぶの活劇を披露してくれる。そういう意味で、とてもありがたい一作だ。

本作の連載はアプリ「マンガワン」をはじめ、「裏サンデー」と「やわらかスピリッツ」でマルチ配信中。単行本は第2巻が2020年12月18日に発売予定だ。

試し読みはコチラ!

この記事を書いた人

miyamo

このライターの記事一覧

無料で読める漫画

すべて見る

    人気のレビュー

    すべて見る

        人気の漫画

        すべて見る

          おすすめの記事

          ランキング