2021.03.12
一等地の豪邸で食事付き!?様々な思惑渦巻く、表はキラキラ、裏はちょっとドロっとしたシェアハウス生活!『シンデレラキャンプ』荻原カイリ【おすすめ漫画】
『シンデレラキャンプ』
荻原カイリ先生による『シンデレラキャンプ』の第1巻が発売されました。
結婚は、孤独回避・墓守・老後・世間体のため……? 社会の価値観にピンと来ない仲良し4人組。女同士で楽しく暮らそうと見つけたシェアハウスは、資産家のイケメン3兄弟が営む、都内一等地(+飯付き)の理想の家。だがそこは、遺産相続のため長男に家督を継がせたい弟たちが仕組んだ婚活ハウスで……!?自分らしく生きたい人に贈る、結婚しない男×婚活脱線女たちの結婚群像劇!
帯に「バチェラー的!」って書いてあるんですけど、当方アマプラには加入しているものの、『バチェラー』は未見ということで、バチェラー的なのかよくわからないです、すみません。実際見た人、教えて下さい。
一等地の豪邸で食事付きのシェアハウス
物語の主人公は表紙にも描かれているショートカットなボーイッシュ女子・六花。今すぐ結婚するつもりはないけれど、ずっと一人と決めたわけでもないため、友達に付き合うように婚活パーティなどに参加しております。
この日も結局釣果無しで、仲良しの友達同士で「いっそシェアハウスで一緒に暮らすなんてどう?」と盛り上がったところ、「いい物件紹介できるけど」声をかけてきたのは、なんともイケメンな2人組。
あまりに胡散臭いので、半信半疑で内見をしてみたところ、一等地&食事付きという圧倒的好条件ゆえに、入居を即決。さらにはイケメン3兄弟が、生活空間は別れてはいるものの、同じ建物に暮らしており、しばしば交流があるというサプライズ付き。新しい生活と新しい恋の予感に、心弾む彼女たちですが……。
好条件には裏がある
まあ好条件には当然裏があるわけで。冒頭のあらすじ紹介にもある通り、男性陣の狙いは「長男に家督を継がせたい」というもの。
合コンで声をかけてきたのは次男・三男。資産家の息子たちなのですが、家長である祖母が「長男が結婚をして家督を継がないのなら、遺産はすべて国に遺贈する」と宣言。一方かの長男は、そんな宣言を前にしても「結婚はしないし、家督は継がない」と明言。それは困ると、次男と長男が画策したのが、このシェアハウスというわけ。
結婚願望のある女性を見つけるのには、婚活パーティはうってつけ。シェアハウスとして提供するのは、自分たちが持て余している屋敷だから、お金もかかりません。さらに「食事付き」というのがミソで、キッチンカーで飲食店を営んでいる長男が、ディナーを振る舞うというもの。長男と入居者の女性たちが夕食を通して仲を深めることを狙ってのものというわけでございます。
女性陣はそんなこと知るよしもなく、その生活を楽しむのですが……という構図。
弟たちの狙い通り、六花と長男がなんとなくいい感じになるものの、「結婚はしない」「家督は継がない」ときっぱり言い放つ長男には当然ながら事情があるわけで、それが物語が進むとともに徐々に明らかになっていきます。また長男ではなく、次男に恋をしてしまう入居者が出てきたりと、兄弟たちの企みが思わぬ方向に転がり始めたりと、面白くなりそうな要素もエピソードが進むごとに続々と投入されていきます。
ちゃんと深みもある良作
てっきり恋愛至上主義な、展開早めのラブバトルが繰り広げられるのかと思いきや、色々と出来事は起きるものの、本筋の進み自体は比較的ゆっくりで、おもいのほか腰の座った物語となっています。
ヒロインの六花が葬儀屋で、死と絡めた人生観が出てきたり、同居している友達たちも医者だったり漫画家だったり、長男が家督を継がずにキッチンカーをやっているという話もそうですが、お仕事的もの的エッセンスがちょこちょこと登場するのが物語に深みを出す一要素に。
キャラクターたちの設定的にはかなりてんこ盛りとなっているのですが、それなりの長期連載で各人にスポットを当てつつ展開したら、思わぬ名作に昇華したりする可能性も感じます。様々な思惑渦巻く表はキラキラ、裏はちょっとドロっとしたシェアハウス生活を、あたなも覗いてみませんか?
©荻原カイリ/マッグガーデン