2021.03.17
幼馴染の親友に再会したら、美少女になっていた──。「友情」「恋愛」の心のゆらぎをとことん丁寧に、コミカルに突き詰めた王道ラブコメ!『chicken or beef?』さぎり和紗【おすすめ漫画】
『chicken or beef?』
美少女になった幼馴染の親友、でも中身は小学生男子のままで。
小学生の時、親友の「つかさ君」は腕っぷしの強いガキ大将だった。ひ弱な少年だった柏小太郎(かしわ・こたろう)は「つかさ君」に憧れ、親友にふさわしい存在になるべく心身を鍛え上げ、高校生になった時にはすっかりたくましい姿の男へと成長した。
そんな彼の目の前を通ったのは、非常に小さく可憐で、ふわっふわの髪の毛が麗しい美少女。小太郎は彼女が、当時の親友だった「つかさ君」こと田鹿(たじか)つかさという女子だったことを、この時初めて知った。
一目惚れしてしまった小太郎。しかしつかさは親友だったはず。自分の思いは「友情」なのだと強く言い聞かせつつも、つかさと一緒にいる時のときめきが抑えられず、苦悩する日々がはじまる。
「幼馴染に再会したら美少女・イケメンになっていた」というのはラブコメの王道ネタ。この作品では幼馴染再会ネタならではの「友情」「恋愛」の心のゆらぎをとことん丁寧に、コミカルに突き詰めつつ、つかさの中身と身長は小学生レベルのまま、という要素を盛り込むことで人間関係のカオス度を大幅にアップさせている。
つかさ側からしたら、小太郎とは小学生時代の親友感覚のままだ。それどころか彼女の脳内は小学生男子の価値観から何も変わっていない。元気にカブトムシを捕まえたりするなど、決しておしとやかとはいえないやんちゃっぷり。だから小太郎に対しても「小学生男子的親友」の距離感で近づいてくる。
これが小太郎との対比でものすごく絵としてもキュート。小太郎は身体を鍛えまくった結果182cmの大柄なムキムキ男子になった。つかさが横に並ぶと身長差が頭ふたつはある。つかさは小学生メンタルなので、無邪気に小太郎に抱きついてくる。小太郎としては心臓がバクバクで落ち着かない。大柄純情男子が好きな人も、小柄やんちゃ女子が好きな人も、確実にニヤけられるシーンだらけだ。
加えてガキ大将時代のメンタルをずっと持ち合わせたままなのも、つかさの大きな魅力。小太郎に比べたらはるかに小さい彼女だが、心はまっすぐで頼もしい「つかさ君」の時から変わっていない。そのため曲がったことが嫌いで、時々入る発言が非常に凛々しくてかっこいい。
「男らしい」「女らしい」という単語が何度か出てくるが、これは小太郎が「男は硬派であるべき」という意識を強く持ちすぎているからだ。心は強くたくましく、趣味は小学生男子的、でも見た目は可憐な少女であるつかさ。
「男らしい」「女らしい」を超えたところにある彼女の魅力は、小太郎同様読者も惚れさせるパワーに満ちている。
©さぎり和紗/JIVE