2021.05.05
元凄腕詐欺師と家出娘3人、擬似家族による華麗なサギ討ちを描いたファミリーストーリー!『家族遊欺』森山大輔【おすすめ漫画】
『家族遊欺』
元凄腕詐欺師と家出娘3人、擬似家族による華麗なサギ討ち
祖父の平治(へいじ)、最近ボケ気味。ももは妊婦の娘。りんごはその子供の男子学生。そして妹の小学生のかりん。ドタバタしながら鍋を囲んで、介護絡みの喧嘩をしつつもまあまあ楽しい4人暮らし……。
というのは全部ウソで。この家族は誰一人血がつながっていない。シラフだととぼけた老人でしかない平治が、わけあって集めた3人の家出少女たち。平治の指示の元、次々と詐欺グループを追い詰めるのが彼らの責務だ。
凄腕ハッカーのももは相手のデータや情報を操作。りんごは格闘の達人として武力行使。かりんは持ち前のコミュニケーション能力で現場へと切り込んでいく。
すげえやつらが擬似家族を装って、悪を裁いていく様子は極めて痛快。平治は普段はぼんやりしているのだが、お酒を飲むととんでもなく鋭くなる元凄腕詐欺師。ももとりんごからは「師匠」と呼ばれているくらいだ。
彼女たちは手当り次第に犯罪を摘発するグループではなく、あくまでも「詐欺」に対してのみ行動するよう、活動を絞っている。詐欺が人の心身を壊す影響があまりにも大きいことを、平治は知っているからだ。詐欺は小さな嘘から、巨大な組織絡みの犯罪まで多々ある。
「詐欺被害ってのは罪無き者を狙い撃ちして囲い込む悪事でできた結晶だ」
「詐欺は商売じゃねえ 純然たる悪意だ」
登場する面々はわざわざ下準備を丁寧にして詐欺を行っているだけあって、比較的恨みや悪意が明確だ。だからこそ、疑似ファミリーが動いて解決していく様子は非常の心地が良い。それぞれが役割を担って協力プレイで戦う様子は、読んでいて実に胸がすく。
この疑似ファミリーがどこまでチームとして持つのかは見どころでもある。確かに繋がりは偽物なので、分解するのは簡単だ。しかし既に命がけで戦ってきているので、もうそう簡単に壊れることはないだろう。妊婦とか男の子とか小学生、というのは詐称でも、十分に志をともにした本当の家族に見える。
家族それぞれの過去のしがらみのある詐欺を描いた内容なので、読めばキャラクターの育ってきた性格の土壌、戦う理由がわかるはず。どのような「詐欺」が犯罪のバリエーションとして描かれるか自体も注目したい作品だ。
©森山大輔/少年画報社