2021.08.28

ヲタク文化に魅了された伝説的殺し屋が日本でほのぼのヲタク生活を満喫する、異文化コメディ!『そのヲタク、元殺し屋。』Ko-dai【おすすめ漫画】

『そのヲタク、元殺し屋。』

本日は、KADOKAWA「少年エースplus」連載作品から『そのヲタク、元殺し屋。』を紹介しよう。

幕開けはイタリア、フィレンツェから。この都市の裏社会には、姿を誰にも見せぬまま恐ろしさを語り継がれる伝説的な殺し屋が存在していた。

名前はマルコ。通称“フィレンツェのT・O(ジ・オラクル)”という。死体の山を築き続け、その血塗られた手で落とせない標的などいない無敵の男。しかし彼はある日とつぜんイタリアから行方をくらませた。

それから一年後。

日本の某所にある安アパートで、悲しみに打ちひしがれる一人の外国人男性がいた。どうやら、大好きな魔法少女アニメ関連ライブのチケット抽選に落ちてしまったらしい。
しかし程なくして同志のヲタクが余分に確保したチケットを融通してもらうことに成功。男は一転して大はしゃぎする。

そう、どっぷりヲタクぶりをみせるこの人物こそ誰あろう、元・殺し屋のマルコであった!

かつてマルコは殺しの仕事中にふと見かけた二次元キャラのフィギュアに心奪われ、即座に日本への移住を決意。いつしか気の合うヲタク友達相手に和気あいあいと語り合い、ライブイベントに参加しては華麗な身のこなしのヲタ芸で周囲から一目置かれるヲタク上級者に転身していたのだった。

銃火器ではなくペンライトをふりかざすマルコは、日本でフィレンツェのT・O(ジ・オラクル)と呼ばれることはない。今の彼についたアダ名は、フィレンツェのT・O(トップオタ)……!

という具合に、大枠としては「ヲタク文化に魅了された外国人が日本でほのぼのヲタク生活を満喫する」という異文化コメディにあたる。そこへさらに、元・殺し屋という血なまぐさいバックグラウンドをつなげたのが本作の持ち味だ。

陰影を強くきかせたシャープな描線で表現される、シュッとしてスマートな体格と薄い無精ひげに鋭い眼光の魅惑的なイタリア人青年。筋金入りの殺し屋だったという説得力に満ちた造形になっている。

闇を濃く見せるからこそ光は引き立つ。クールで殺伐とした職業からホットなカワイイ趣味へ。落差が大きければ大きいほど楽しくなる仕立てにおいて本作は見た目に最適解を突いている。「こういう絵柄でこういうキャラクターが活躍する、シリアスな殺し屋漫画をやっても成立するよな〜」と思わせるビジュアルの勝利だ。

回が進むと、さらに別の殺し屋が日本にやってきてはそいつもまた別ジャンルのヲタ趣味をもっていたりと展開にバリエーションがついており、シンプルなコンセプトを多彩に楽しませる工夫がこらしてある。

なお、単行本はまだ第1巻が出たのみなので今からでも入りやすい。Web配信が残っている最近のエピソードとあわせて読み、元殺し屋が送る愉快なヲタクライフの行方を見守っていただきたい。

この記事を書いた人

miyamo

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