2021.08.31
少女の裏の顔は人気VTuber! 現実世界(リアル)と仮想世界(バーチャル)の垣根を超えた三角関係を描く『青のアイリス』やぶうち優【おすすめ漫画】
『青のアイリス』
1983年にデビュー、いまやベテラン漫画家と言えるやぶうち優先生の最新作のテーマは、なんとVTuber。現実世界(リアル)と仮想世界(バーチャル)の垣根を超えた三角関係が描かれます。
主人公は中学2年生の女の子・虹ヶ原愛理。愛理は運動神経抜群で、誰かが困っていると頭で考えるより行動に出るタイプ。ちょっとガサツで怪我などをしても気にしない性格もあって、同性にも“イケメン”と呼ばれたり、はたまた親しい相手からは“野獣”と呼ばれてからかわれたりしています。
男の子ふたりと愛理、合わせて“イケメン御三家”と言われるほどの学校の人気者……けれど愛理自身は、もっと「女の子らしい」、「かわいい」存在に憧れており、“普段の私”と“なりたい私”の間にズレを感じていたのでした。
そんな彼女の、学校の友達には内緒の顔──それはフォロワー数100万人を超える人気VTuber「青野アイリス」として活動していること。アイリスのことを知っている仲良しの友達や男の子たちも、かわいい衣装に金色のツインテールといったアバターでアイドルソングを歌うアイリスが、愛理と同一人物とは気づいていません。
ある日、アイリスとは別のアバターを使い、バーチャル空間の交流スペースで観客としてライブを楽しでいた愛理は、見ず知らずの相手にちょっかいを出されていたところを、謎の少年アバターに助けられます。少年アバターのことが気になって仕方がない愛理。様子がおかしいことに気づいた友達に「恋しちゃった!?」と聞かれ、余計にドギマギしてしまいます。やがて、彼の声がとある男友達と似ていることに気づいた愛理は……?
今後は愛理とふたりの男の子との三角関係が描かれていくであろう本作。彼女たちが甘酸っぱい初恋に葛藤する様子は、少女漫画として王道ではあります。しかしそこに「周囲が求める人格から解放された振る舞いができる」という、アバターを介したコミュニケーションの特性が組み合わされることで、“秘密の共有”や“本音の吐露”といった出来事が、少し入り組んだ、重層的な意味合いを持つのがおもしろいところ。
男の子たちもいろいろと秘密や悩みを抱えていそうで、今後の展開が楽しみです。
ちなみにアイリスが歌っているアイドルソングは、やぶうち先生の前作にあたる『ドーリィ♪カノン』に登場した楽曲。ファンならニヤリとできる小ネタにも期待できそうです。
©やぶうち優/小学館