2021.10.10
通学路で出会った不思議で不気味な「怪奇組」組長メチャ子と、超・怖がりな男子が繰り広げるホラーコメディ!『レッツゴー怪奇組』ビュー【おすすめ漫画】
『レッツゴー怪奇組』
本日は、バラエティWebメディア「オモコロ」で連載中の『レッツゴー怪奇組』を紹介したい。
常人の六倍は恐怖に弱いと自任する超・怖がりな男子生徒が、通学路で出会った不思議で不気味な女の子。
彼女は自らを「怪奇組」の組長と称した。
非業の死をとげた人間の幽霊・呪いを宿した物品が変じた化け物・地元の言い伝えに出てくる妖怪・うかつに踏み入れば命が危うい心霊スポット……。
この世にあるさまざまな怪異、そのすべてを取り仕切って世間の人々をおどかし怖がらせる影の組織。それが「怪奇組」!
ところが若くして組長の座を継いだ少女には、脅かし役として致命的な欠陥があった。
何かを怖いと思う感性がすっぽ抜けており、どうすれば他人を怖がらせることができるのかわからないのだ。トップが頼りにならないとみなした構成員たちは次々と組織を抜け、そのせいで昨今はお化けのウワサが衰退してしまったらしい。
そんな矢先に協力者として抜擢されるのが、冒頭の怖がり少年である。
身近に起こる怪奇現象のどこがどんなふうに怖いのか。組長に教えて理解させ、人をうまくおどかせる往年の怪奇組の勢いを取り戻す相談役を託されたのだ。
かくして、なにもかもが強引で迷惑でメチャクチャな女の子、通称「メチャ子」は来る日も来る日も少年の家へ押しかけては怪異についてレクチャーを強要し、彼の平穏な学校生活をかき乱していく……。
という具合に、怪奇の側に属する当人が怪奇についてピンときていない転倒が可笑しいホラーコメディとなっている。
日常生活に異物をもちこみ、ズレた視点でトンチンカンな言動をみせる役と、それに対してテンション高い返しをくりだす役。ふたりの姿はそのまま漫才でいうボケとツッコミの図式となり、良質なコントの風味をかもしだしている。
怪奇・恐怖が題材なのに笑いを生めるのか、とは問うまでもない。
そもそも元から恐怖と笑いは紙一重だ。常識や予想といったものに逆らい、現実にあるものをディフォルメして意表をつく。それによって引き起こされる反応という意味では裏表の関係にある。だからやりすぎたホラー作品が笑いをもたらすことがあるのだし、冗談がスベってシャレでは済まなくなったりもするのだ。
本作においても、超自然的存在が出てきて少年がビックリする場面には前後の文脈や画面の演出がほんのちょっぴり違えばまともに恐ろしくできそうなものが散見できる。
そこをあくまでコメディの域にうまく留めているのが作者の手腕ということだ。メチャ子や呪いの人形、その従姉妹でライバルのシュラ子たちのビジュアルがうまくディテールを落として漫画絵ならではのかわいらしさを帯びているのはその匙加減で有利に働いている。
そう。メチャ子ちゃんはかわいいのだ。
べつにデザイン上でへんに媚びるような記号は無いし、行動もすさまじくアグレッシブなため一般的にいうかわいげがあるキャラではない。けれど絵の力で、なんともいえない愛嬌がつねに残り続けている。
これ、特定の属性を設定された単体ヒロインとのかけあいを延々楽しむ「〇〇さん」タイトル系の日常漫画みたいな読み方もできますね……?
厄介とカワイイもまた、紙一重の裏表なのかもしれない。
©ビュー/小学館