2021.10.27
クライムアクションゲームをやりたい11歳女子とやめさせたい30歳。子供の暴走する純粋な思いと、大人として倫理を伝えたい悩みが複雑に入り交じる!『メガロポリス・ノックダウン リローデッド』田澤類【おすすめ漫画】
『メガロポリス・ノックダウン リローデッド』
小学生が人を殺しまくるゲームをやるのがどうしていけないの? クライムアクションゲームをやりたい11歳女子とやめさせたい30歳男子の悩み
子供は人を殺しまくるようなゲームはやっちゃいけません、R18、RATE Zです! というのはまあ、そりゃそうだと反射的に同意してしまうもの。
でも、なぜなのか説明せよ、と言われると言葉に窮する。エログロバイオレンスは子供に悪影響があるから…というのが一般的な返答だろうけれども、悪影響ってそもそもなんだろう? ゲームと現実がごっちゃになって人に暴力を働くことってあるの? それって規制派がゲーマーに対して「ゲーム脳」とか非科学的な言葉を押し付けて嫌な気分にさせたのと同じじゃない?
じゃあやらせてもいいんじゃないかと言われると……うーん大人としてちょっと気が引けるというか……感覚の部分を法的に、倫理的に説明するのは、実証できないんじゃどうにも言語化が難しい。
そんなもやもやをかっ飛ばすような皆殺しトリガーハッピーの小学生少女と、彼女を小学生と知らず組んでいた誠実な成人ゲーマー男子のつながりを描いた『メガロポリス・ノックダウン』の続編『メガロポリス・ノックダウン リローデッド』が発売された。子供の暴走する純粋な思いと、大人として倫理を伝えたい悩みが続編では複雑に入り交じる内容になっている。
前作では、みんなからはマジメに見られている11歳の少女・的野鋭美がクライムアクション「メガロポリスノックダウン(通称・メガノク)」にドハマリする様子が描かれていた。街の中で人を殺すことも犯罪を犯しまくることも可能な、なんでもありな内容のゲームで、当然18禁。専門学校生と自身を偽った彼女は、このゲームに慣れている30歳の瀬戸口守とゲームでコンビを組むことに。
鋭美が「メガノク」に求めているのは、人を撃って殺す快感。なのでサイレントミッションもなんのその、スナイプで皆殺しというめちゃくちゃな技術力で対人戦でも大暴れする。FPSの技術の成長は華麗で痛快だが、鋭美が子供だと知ってから守は悩む。
「オンラインで未成年に悪影響なのはトラウト(作中の暴力的プレイヤー)なんかじゃない 俺だったんだ」「紳士ぶってやさしく接したりした結果 こんな世界に引き入れてしまった」
守の家にリア凸するほどの情熱と、周囲に文句を言わせないしたたかさで立ち回る鋭美の様子が楽しい「リローデッド」。鋭美も守のことは信頼しているし、大切な相棒なので変なことはしないものの、ちょっとでも悲鳴をあげればまたたく間に人生が終るのは守の方。暴力ゲームでつながった二人の関係はかなり危うい。
鋭美はゲームで人を撃ちたくて仕方ないけれども、「リローデッド」では「メガノク」をやるシーンがない。悩んだ守が、他にも面白いゲームはいっぱいある、と伝えるべく奮闘するからだ。デフォルメキャラクターが水鉄砲的なもので撃ち合うゲームや、モンスターをみんなで狩りにいくゲームなど、有名ゲーム風の作品が次々登場。鋭美は持ち前のエイム技術で、器用にこなしながらゲームをしっかりと楽しむ。
ただ、彼女はどうしても不満を抱えたままだ。鋭美がやりたいのはゲームではなく「メガノク」。守は悩む。
「ゲーム(あそび)じゃないから鋭美さんは建前を許さない それは危険な考え方ではあるけど 彼女のこの眩いばかりの「純度」を誰が攻められよう」
11歳が18禁ゲームをやるのは明らかにアウトだが、彼女の「メガノク」を楽しむ様子はあまりにもピュアで、読んでいるとどうにも「問題」と言い切れない気がしてならなくなってくる。いや法的には問題なんだけども…。
答えの出せない問題が山積みなこの作品、まずは前作以上にクレバーさが増した小学生鋭美の真っ黒な眼光を楽しんでほしい。
ゲームの悪影響云々以前に、鋭美の生来の、欲望のために頭を回転させるヤバさが見えて痛快だ。それでいて守には誠実に信頼感を表しており、守も鋭美のためを思って本気で奔走し続けている距離感も楽しい。
「メガノク」内では一緒に殺しまくる相棒だったが、リアルでは凸凹で綱渡りなバディ感が見え始めているので、続きが楽しみだ。
©田澤類/ナンバーナイン