2021.12.01
大麻取締法違反で逮捕された女子が入った雑居房は、ワイワイ楽しくヒリヒリ怖い空間『ごくちゅう!』こんぱる&ふじしまペポ,草下シンヤ,雨宮【おすすめ漫画】
『ごくちゅう!』
大麻取締法違反で逮捕された女子が入った雑居房は、ワイワイ楽しくヒリヒリ怖い空間
萌え漫画然としたタイトルに、キュートな表紙。そして中身はリアルな囚人生活。逮捕されたガチ犯罪者女子たちが巻き起こす、ほんわかとは言い切れないけどふんわりと表現した獄中あるある物語。可愛い女の子の皮を被せたらアレな話もすっかり楽しくなるのだから、かわいいは真に正義だ。
晴乃うらら。フレッシュな新入社員の彼女はフレッシュなお野菜(大○のこと)をゲットして使用していたことでポリスがキャッチ。大麻取締法違反で1年の刑期を言い渡された。
雑居房にいたのは3人。目つきが悪くおっかなげな容姿の夏川ひまり。業務上横領罪、刑期2年半。大柄な体格の秋月柚木。傷害罪で刑期2年。おとなしそうで不思議な空気感の冬白華。罪状は不明。刑期は8年と一人だけかなり長い。
果たして彼女たちと仲良くなれるのか? 能天気なうららにも緊張が走る。
4人の仲良し雑居房生活を描いたふわふわライフは、なんだかちょっと楽しそうにすら見える。これはうららがあっけらかんとした性格だからこそ見える景色。実際は規則正しい刑務所の規則に従わなければいけず、刑務官の見張りも非常に怖い、緊迫した空気らしい。入浴時間は15分。手紙は全て検閲。刑務作業は単純作業でハード。
これをリアルな絵柄を用いて苦悶の表情で描いたら、読んでいて相当しんどい作品になるだろう。
しかしうららは割となんでも楽しめるタイプで、あまり深く考えて行動しない。雑居房の3人ともすぐ親しくなり、刑務作業はご当地人形作りも「かわいい~~!! これを作れるんですか! たくさん作って稼ぐぞぉ~!」と笑顔。こんな調子なので全編に渡って、厳しい生活もハッピーに描かれており、ものすごく読みやすい。
雑居房の仲間もユニークだ。特に見た目きつそうなひまりのギャップが楽しい。言葉がきつめなのは、後輩ができて嬉しいから。あらゆることが不器用で、布団の片付けも入浴も刑務作業もてんでダメ。それでも必死に背伸びしているのでどうにも憎めない、愛すべきキャラになっている。ただこの子がリアルにいたら、周囲の足を引っ張り過ぎていて雑居房の仲間からボコボコにされそうでならない。ここはほんわか漫画で本当によかった。
取材協力の雨宮が、4年弱の実体験をコラム「ごくちゅう!DEEP」が漫画の合間に挟まれているのがポイント。
「図書の時間は時点の争奪戦」「口内あいうえお確認される投薬でも呑み込まずにいられる」など普通だったらまず体験しないものばかりで興味をそそってくる。萌え空間とリアルな出来事のバランスを上手く保っているので、是非比較しながら読んでほしい。
うららは優しく人当たりもいい、愛され要素満点な女の子なのだが、ことあるごとに大麻の話を持ち出しては楽しそうにしている、全く反省していない超図太い人間。だからこそこの獄中生活がポジティブに楽しめているのかもしれないが、冷静に考えたらかなりの問題児だ。けれども重たい空気を取っ払ってくれるので、ついつい彼女が口を開くと安心してしまう。
まだ自身の刑罰の理由を話せない華など、今後もっと生々しいヘビーな話も出てきそうではある。けれどもうららが能天気なので作品は鬱展開にならないであろう予想も立つ。
獄中の管理された生活は、読む際に女子校の宿舎と重ね合わせて関係性を楽しむことも、このマンガでは可能だ。同室女子のワイワイ物語として友情を味わいつつ、彼女たちのアウトローな感性にニヤニヤしながら笑い飛ばそう。
©こんぱる&ふじしまペポ,草下シンヤ,雨宮/講談社