2018.05.02
【日替わりレビュー:水曜日】『大上さん、だだ漏れです。』吉田丸悠
『大上さん、だだ漏れです。』
スケベな妄想筒抜けな相手と、恋人になりました
「真面目なのにスケベ妄想する女の子萌え」が最近微妙にブームの様子。耳年増っ子はかわいいものです。
そんなむっつりスケベ少女が、エロワードを言う度に感動が起こる、ラブコメディ。
男性器の断面図を見て好奇心を持つほど、抑えられない性的な興味と妄想に悩まされている、大上。であるがゆえに、彼女はバレることを恐れて人と距離を取り、友達が一人もいなかった。彼女がイケメン少年の柳沼に触れた時、彼女の口からポロリと言葉が漏れた。
「ちんこ見せて」
柳沼は、触れた相手が本音を口走ってしまうという特異体質の持ち主。相手を傷つけないため、人が近づかないよう必死に避ける生活が続いていたのだ。
彼のことが心配でならない大上。二人はぼっち同士で、友達になる練習をはじめる。
1巻は、人に心を開くのが苦手な大上が、クラスメイトや柳沼に自分から接していこうと努力する様が描かれた。2巻では柳沼への思いが恋に変わり、二人が付き合い始める。そして3巻では、自分の思いを言葉にする方法がわからない柳沼のコンプレックスが見えてくる。
スケベ妄想というのは、思春期においては言わば本人の「秘密」そのものだ。だからスケベ妄想を隠すということは、本音を言えず苦しむ状態の表現でもある。
付き合い始めて大上は、柳沼に「手 つないでもいい?」と聞いた。もちろん本心だ。手をつないだら心の中がだだ漏れになる、と心配する柳沼を制して、彼女は手をにぎる。
「柳沼くんの手 あっつい……! 骨ばってがっしりしてて 男の子の手で……エロい!」「手ですらこれなのに 粘膜同士で触れ合ったらどうなっていまうのか 想像がつかない いや 想像するだけで頭が」
心がだだ漏れるのを、彼女は恐れなかった。
こんなに恥ずかしい本音を晒してでも、手をつなぎたいと思ってくれる相手がいる、というのは柳沼にとっての大きな励ましだ。
柳沼がふと衝動にかられて、大上の胸を触ろうとするシーン。ラブコメ的にはただの変態シーンだが、人に近づくのを頑なに拒んできた彼が自分から動いた瞬間だと考えると、ちょっと泣けてくる。
柳沼に抱きついた大上の告白。
「ちんこ見せてくれるまで 柳沼くんから離れない……!」
性欲と本能を真っ直ぐに表現できることは、相手に自分をさらけ出した素敵な恋愛であることを肯定してくれる名シーンだ。
©吉田丸悠/講談社