2018.05.09
【日替わりレビュー:水曜日】『あなたを大人にする○つのこと』あんねこ
『あなたを大人にする○つのこと』
少女がオトナになる方法、それはエロスを知ること
大人になるにはどうすればいいのか。
紗輝「大人といったら20歳 20歳といったら年齢確認 年齢確認といったらエロだ つまり大人=エロなんだ」
なるほど!……いや全然わからん。
背伸びしたいお年頃の先崎紗輝(せんざき・さき)中1、紗輝のことを「センパイ」と慕う後路コウ(うしろ・こう)小6。
2人の少女はエロスを知るべく、研究を開始する。
まず飲み物はマグカップじゃなくてワイングラスに入れよう、エロい気がするから。
エロといえばおっぱいだから、疑似おっぱいを作ろう、公園の砂で。
子供ができれば相対的に大人になるはずだから、子供を作ろう、作り方知らないけど。
むりかなー。
どうやっても正しい「エロ」の解答にたどり着けない連想力の持ち主の紗輝と、そんな彼女に妄信的についていくコウのちぐはぐな会話が楽しいお子様コメディ。
さすがに中1で子作りを知らないのはどうなのか? という不安はあるが、そんなのをはるかに飛び越えるくらい紗輝はバカなので素直に笑える。
エロを一緒に調べてもヒントが全く見えない中、2人の距離が「先輩・後輩」以上にぐんぐん近づいていくのが見どころの一つ。本編はドタバタコメディだが、扉絵は紗輝とコウの百合ものとして描かれている。
2人が密着してブラジャーを付け合う4話。ドレスを着て紗輝がコウの手のひらにキスをする8話。扉絵はどれも、2人だけのキラキラした空気に包まれている。
コウは紗輝のことを元々強く慕っている。彼女から見た紗輝は、楽しいことを一緒にしてくれる王子様のようだ。
キスの練習をする8話。顔を近づけた時に2人はドキドキが止まらなくなって結局できなかった。結婚ごっこをした時、「未来のコーハイに申し訳ない」と紗輝は泣き出してしまった。
まだまだ大人になれないし、エロの意味もわからない。
でも感情はちゃんと芽生えている。泣いた紗輝を見て、コウの心にも確実に何かが生まれた。大人に一歩だけ、近づいた。
ギャグはとても破天荒。その中で芽生える独特な少女たちの関係は、とても繊細。
思春期よりもっと手前の女の子たちは、無茶をしつつも傷つきやすい。
©あんねこ/KADOKAWA