2018.05.02
「百合展2018」レポート!女性同士の感情の触れ合いを描く百合ワールドを堪能あれ
女性同士の友情や愛情を描く「百合」をテーマとした展示をたっぷり味わえる「百合展」は、今年で3回目の開催を迎えました。今回は、現在ライトボックススタジオ青山で開催中の「百合展2018 東京」の様子をレポートします。
百合展のこれまで
最初に、百合展のこれまでを少し振り返りましょう。
はじまりとなった「百合展2016」は東京で開催されましたが、好評につき初回から早速、大阪での巡回が決定。翌年、「百合展2017」は台湾のマンガ展「2017 漫畫博覽會」への出展を果たし、今回の「百合展2018」は東京・大阪開催に加えて福岡でも開催となりました。
内容は年を追うごとに充実していき、作品のPRの場としても展開されるように。百合作品自体の拡大と共に変遷してきた百合展は、組織や個人という垣根も表現手法も越えて「百合」という要素で強く結ばれた、唯一無二の展示会なのです。
百合展のマンガ家
会場では一階に作品の展示があり、二階にグッズショップが展開されています。魅力的な展示品ばかりでひとりひとりについて語りたい気持ちは山々ですが、数名をピックアップしてご紹介します。
雨隠ギド先生
名作でありコミックの表題作である『終電にはかえします』に加えて、『一瞬のアステリズム』や『永遠に少女』の名場面が展示されており、感涙必至。
伊藤ハチ先生
大団円を向かえた『ご主人様と獣耳の少女メル』の名場面がずらりと並び、最終回の感動が思わず蘇ります。相変わらずほのぼのする、千里様とちるさんの美麗イラストも冴えている……。
大沢やよい先生
『2DK、Gペン、目覚まし時計。』は意識高い系OLのルー子さんのキャラクターがお馴染み。本編の切実な展開が惜しみなく展示されていて、世界観に浸ることができます。
缶乃先生
『あの娘にキスと白百合を』は百合好きが安心して読める定番タイトルのひとつ。白峰さんと黒沢さんのもどかしくも微笑ましいドタバタを中心に、様々な少女たちの恋心を丁寧に綴っていく学園ストーリー。展示はカラーイラストが豊富で、華やいだ気持ちに。
岸虎次郎先生
『オトメの帝国』はとにかくセクシー。狙った色気ではなくて少女たちの無防備な瞬間を切り取っている。多くの百合カップルが登場するが、無邪気なテイストだったり、シリアスなラブストーリーだったりとオムニバス式で楽しめます。今回選定された原画はきわどくて必見。
玄鉄絢先生
原画展示はありがたいことにオリジナル。瑞々しくファンタスティックな少女像は既存のタイトルにはない空気感があり、前後のエピソードを想像するだけでぞくぞくしてしまいます。
サブロウタ先生
大人気の『citrus』から、迫力あるイラストを展示。気迫の満ちた柚子と芽衣のこちらを見据える瞳には、男女問わず魂を吸い取られそうに。ギャルという設定の柚子ですが、その奔放な姿の内に宿す純真が、芽衣との出会いによって染まっていく姿が凄絶。
志村貴子先生
満を持しての登場であるだけでなく、描きおろしの原画が展示されています。先生の参加を心待ちにしていたファンも多いでしょう。百合の黎明期に仄かに兆した、淡く触れがたい空気感そのままの原画は思わず拝みたくなるほど。
高嶋ひろみ先生
『加瀬さん。』シリーズはとにかく応援したくなる百合作品。山田のいじらしさと加瀬さんの艶やかさの対比、そしてその間に確実に横たわる恋情はストレートで明るい。劇場アニメの公開を控え、場内では特大スタンディが展開。百合展限定のムービーコメントも上映されています。
仲谷鳰先生
『やがて君になる』は続々重版、累計50万部突破の大人気百合マンガ。「人に恋をする気持ちがわからない」侑とその共感者であったはずの燈子。しかし燈子が侑に恋した瞬間、その均衡は崩れ物語が始まる……。待望のアニメ化が決まり、ティザービジュアルを使用したアニメ化記念ポスターを展示中です。
森島明子先生
百合界の女神的存在で、その描線もキャラクターデザインも全てが新しいのに不朽の作風で尊い。百合といえば儚く消えるというイメージを生命感溢れる描線で払拭してくれます。今回の展示では『百合展2017』のグッズに用いられたイラストが飾られており、そのデザインセンスにも息を呑むほど。
森永みるく先生
森永先生のマンガなくして百合のスタンダードは語れないでしょう。対照的な少女がふとしたきっかけで仲良くなり、お互いの違いを感じながらも距離を縮めていく。けれども、ただの友達でいられなくなるその心情を、正面から切なく捉えています。展示のカラーイラストは繊細な描線に優しい色使いでいつまでもうっとりと眺めていられる一枚。真に尊い。
百合展の写真家
長谷川圭佑先生
長谷川圭佑先生の作品は前後に必ずストーリーがあるはずと感じられます。映画のワンシーンのような世界観の構築のうちに築かれており、切り出された場面のあとさきを空想せずにいられません。
ゆりあ先生(『ふともも写真館』)
さらけだされたふとももの間に横たわるのは、官能性ではなく「無防備」。同性同士だからこそ気を許した瞬間のつながりと、「自撮り」に通じる少女の自己主張性は今の時代の百合に必要な視点でしょう。
SAKUnoTORIDORI先生(『ROOM NANAIRO』)
SAKU先生のポップ展示には「誰にも取られたくないって気持ちは愛とか恋とかよりももっとずっと深いもの。」と記されており、実に正しい。確実に一線を越えていると感じさせる写真群で、とにかく格好いい作品。展示方法も工夫があり素敵なので実際に見て頂きたいところ。
「百合展2018」の公式ページに掲載されている、綾奈ゆにこ先生の序文にあるように、観測者の数だけある百合表現。
かつて少数派だった百合も多様性を宿しつつあり、これからも百合の世界が益々広がることを祈っています。
百合展に幸あれかし。
イベント情報
百合展2018
・会期:2018年4月28日(土)から5月4日(金)
・時間:11:00〜20:00(最終日は16:00 CLOSE)
・場所:ライトボックス青山 〒107-0062 東京都港区南青山5丁目16-7
・問い合わせ先:ヴィレッジヴァンガード下北沢店 03-3460-6145
(※催事会場とは異なりますのでご注意ください)
※5月5日(土祝)に『COMITIA124』でも開催