2018.05.06
【まとめ】マイナー誌も見過ごさないで! 女性向け雑誌発の隠れた良作
出版不況が叫ばれる昨今。全盛期に比べ、各社のマンガ雑誌の出版部数は低下の一途を辿っており、なかなか厳しい状況が続いているようです。
一方それに反してマンガ雑誌の媒体数は増加しており、現在は300誌以上あるとか。最近ではWebコミック形式の媒体も増えており、様々な形で生き残りを模索している様子。
普段目にしやすいのは、その中でも上位に位置するメジャー誌の作品たち。マイナー誌の掲載作は、ネットでバズったりでもしない限り、なかなか目に触れる機会も無かったりします。というわけで今回は、女性向けのマイナー誌に掲載されている隠れた良作をご紹介してみたいと思います。
『わかばのテーブル』
「食男」(ふゅーじょんぷろだくと)掲載
ここ数年、食をテーマに扱った作品がものすごい数で増えています。特定の食材を深掘りしてみたり、その職業ならではのご飯だったり、食べ方・呑み方で語ってみたり、地域でまとめてみたりと、その切り口は様々。飽”食”の時代ならぬ、飽”食マンガ”の時代が訪れようとしています。
本作が掲載されている「食男」は、食べる男子をフィーチャーしており、掲載作の全てが食をテーマにしているという、まさに時代を象徴するかのような雑誌。なんとなく安易な印象を受けるものの、意外にも良作が埋もれていたりするので侮れません。
本作は、彼女と別れ傷心中の青年・道信と、親と離れて暮らす寂しい幼稚園児・歩との、心のふれあいを描いたハートフルストーリー。互いに寂しさを抱える歳の離れた2人が、ひょんなことから出会い、一緒にご飯を食べることで、その寂しさを埋めていきます。
登場するキャラクターがみな優しさに溢れており、柔らかであたたかな雰囲気も相まって、読んでいて本当に癒やされる物語になっています。
『蓮住荘のさんかく』
「ARIA」(講談社)掲載
大手出版社の雑誌は発行部数が公表されているのですが、その中でも群を抜いて部数が少なかったのが「ARIA」。2010年に創刊されたばかりの比較的新しい雑誌で、なかよし編集部を母体とした、”非日常的ガールズコミック”を標榜する雑誌です。直近の印刷部数は1万部を切っており、大丈夫なのかとちょっと心配なレベルでしたが、4月28日号で休刊となってしまいました。
しかしながらさすが大手出版社だけあり、掲載作のクオリティは比較的高め。色々とオススメしたい作品はあるのですが、個人的にお気に入りなのが『蓮住荘のさんかく』です。
カメラが大好きな主人公・麻子が暮らす下宿先を舞台にしたラブコメディ。ピュアで恋に無自覚な麻子をめぐって、優しい幼なじみのお兄ちゃん・蛍と、クールで人見知りな同級生・雨村くんとで、わちゃわちゃと三角関係を形成します。
正反対のタイプのイケメン2人と、同じ下宿でひとつ屋根の下。そりゃあもう色々な出来事が起こります。
同居もの、部活もの、三角関係ものの美味しい部分を全部詰め込んだかのような、お得感溢れる一作。
『夜明けの図書館』
「JOUR すてきな主婦たち」(双葉社)掲載
主婦向けマンガ雑誌「JOUR すてきな主婦たち」。この手の雑誌は意外と発行部数が多く、公称は15万部発行。しかしながら単行本となると、なかなか馴染みがありません。そもそも長期連載が少ないため、単行本の刊行数も少なく、出たとしても書店の棚ではあまり目立たないところに置かれていることもしばしば。
そんな中、本作『夜明けの図書館』は5巻まで刊行されるヒット作となっています。
タイトルからも分かる通り、図書館を舞台にしたお仕事もの。新人司書である主人公・ひなこの図書館での奮闘を描きます。ひなこのお仕事は、利用者からの質問対応がメインの「レファレンス業務」。
日頃知ることのない司書のお仕事を、本作では細やかに描いています。また人との関わり合いが多くなるポジションだけに、ハートフルな描写もしっかり。
地味ながらも、お仕事ものとして楽しめる下地がしっかりと出来ており、読んでいて安心感のある一作です。
『おとなりコンプレックス』
「クロフネ」(リブレ出版)掲載
前身の「クロフネZERO」から数えると、割と老舗に分類されるWeb雑誌なのですが、勢いのある同発ないし新興のWebコミック誌と比べると、ちょっと地味めな存在に映るのが「クロフネ」。
かつて『ドントクライ、ガール』(ヤマシタトモコ)で一発当てた実績があるのですが、それ以降は話題になることもあまりありません。けれども、何気に良い作品が掲載されているんですよねぇ。
本作『おとなりコンプレックス』は幼なじみの大学生男女を描いたラブコメディ。女のあきらは、高校までバレーに打ち込んでおり、その高身長っぷりと短髪から男の子によく間違われる「イケメン女子」。そんな彼女の幼なじみ・真琴は、姉の手ほどきによって美女に化ける「女装男子」。
ヒロインは男っぽく、ヒーローは美女に化けるという、絵に描いたような凸凹コンビ。恋愛に疎いあきらと、そんな彼女に密かに想いを寄せる真琴との、仲良くも噛み合わない様子が、可愛く面白い作品です。
以上、4作品をご紹介しました。知っている作品や雑誌はあったでしょうか? これらはまだまだ氷山の一角で、掘れば掘るほど色々と面白い雑誌や作品が出てきます。
こういったマイナー雑誌だからこそ描ける作品もあるもので、是非あなたも自分好みの作品を開拓してみてはいかがでしょうか?
©芝生かや/ふゅーじょんぷろだくと, ©野切耀子/講談社, ©埜納タオ/双葉社, ©野々村朔/リブレ出版