2018.05.08
【日替わりレビュー:火曜日】『ジョジョリオン』 荒木飛呂彦
『ジョジョリオン』
「『ジョジョの奇妙な冒険』で第何部が好きですか?」 この質問をすると、宗教戦争のようにイデオロギーのぶつかり合いになります。
『ジョジョ』シリーズは、個人的に二種類に分かれると思っています。
第2部や第3部、第8部(『スティール・ボール・ラン』)のように、場所を移動しながらキャラクターたちが活躍する「動」の章。
第4部、第6部(『ストーンオーシャン』)のように、一定の地域や場所、建物を中心とした「静」の章。
現在連載中の第8部『ジョジョリオン』は「静」の物語。舞台は第4部の舞台と同じく杜王町なんですが、作者としては別世界の物語だそうで関連性はありません。
けれども、吉良吉影はキラークイーンを使いますし、ヒロインの名前が広瀬康穂って! 康一くんの女体化かよと最初ツッコミ入れてしまいました。
そんな第4部好きにはたまらない小ネタの数々で、読みごたえも抜群。荒木飛呂彦独特の「静」の魅力に溢れたアクションホラーになっています。
例えば12巻。「家の中に長女のボーイフレンドを招き入れる。家族団らんの中で、ふと席を立つと、壁のあちこちには手形がベタベタと。そしてお手伝いさんがいつの間にか行方をくらませている……。」
「ドドドドドド」という効果音がピッタリの緊張感。平和な日常生活の合間にさりげなく影が潜んでいく、恐怖を煽る演出が荒木流「静」の見どころでしょう。
その「静」描写の核となっているのが、荒木飛呂彦が影響を受けたと言われているスティーブン・キング的な要素。これが第8部でも散見されていてニヤリとしてしまいます。
5巻で愛するものを生き返らせるために禁忌に手を出す『ペット・セマタリー』的行動。7巻の植木鉢がだんだん近づいてくるの、『シャイニング』の造園ですよね! うっかり元ネタ探しにも力が入ってしまいます。
それにしてもクワガタ対決で1冊まるごと描ききる手腕には驚かされます(第9巻)。言葉を選ばず言ってしまうと、くだらない出来事を、この上ない大事件に仕上げてしまう荒木飛呂彦のハッタリ力たるや。
手札がブタのインケツなのに、ストレートフラッシュのブラフをかます承太郎そのまんまですな!
©荒木飛呂彦/集英社