2018.05.13

【日替わりレビュー:日曜日】『青のオーケストラ』阿久井真

『青のオーケストラ』

『こころが叫びたがってるんだ』のコミカライズ版や、『猛禽ちゃん』といった作品をこれまでに手がけられてきた阿久井真先生が、「マンガワン」で現在連載中の青春ドラマ『青のオーケストラ』

実父が関係する、とある理由でヴァイオリンを弾くのを辞めてしまった、元・天才少年の青野一は、自身を音楽から遠ざけ、無気力な日々を過ごしていました。しかし、進路を考える中学3年生の秋、同級生の少女・秋音律子と出会い感化されるうちに、合奏コンクール常勝の「オーケストラ部」のある名門高校を目指すことに。無事入学を果たしたその日に、オーケストラ部の演奏を聞いた青野は、その洗練された、あまりにも楽しそうな演奏に衝撃を受け、止まっていた彼の時間も動き出していく──というのが、大枠のストーリー。

まさにスーパー王道! オーケストラ部を題材にした、青春ド真ん中の文化系部活マンガでございます。『響け! ユーフォニアム』『四月は君の嘘』といった作品が好きな人は、手にとって頂いてまず間違いなしではないでしょうか。

全体的に基本のお話の筋として描かれるのは、主人公の青野君の精神的成長の模様。幼い頃は1人でコンクールに出場していたこともあり、彼のヴァイオリンは1人でソロを弾く分には一級品です。
しかし、ヴァイオリンを辞めるきっかけとなったある事件のこともあり、中学生になった彼は人とも音楽とも距離を置いてしまっていました。

そんな中、下手ながらも一生懸命にヴァイオリンを弾こうとする、秋音に感化され、またオーケストラという、「みんなで」弾くことの重要さ・楽しさに青野君は気づいてしまいます。
結果、彼の性格や考え方に音楽が良い影響を与え、やがて彼が奏でる音楽にも変化が現れて、豊潤な旋律を響かせていくようになっていくのです。

また、「オーケストラ」の作品らしく、幅広いタイプのキャラクターが数多く登場するのも魅力的。オーケストラで音を繋ぎ合わせる楽器達のように、淡いロマンスやライバル心、登場人物それぞれの繊細な心の揺れ動きも、並行してとても丁寧に描かれていきます。

それから、3巻中盤までは主要メンバーたちの心のパズルが組み上げられていくことがメインに据えられていましたが、今後はいかにして自身達が奏でる音楽を高めていくのか、という部分にフォーカスが当てられていくという、段階を置いた展開も◎。

よくあるのは弱小高校が頑張って、コンクールを勝ち抜いていくというお話ですが、青野たちが通う高校は、あくまで強豪校。上手くて当然、より高みをみんなとどうやって目指していくのか、という部分を描いていこうとしているのもおもしろいポイントです。

タイトルに「青の」という修飾語が付くにふさわしい、少年少女の鮮やかで煌びやかな青春の1ページが丁寧に紡がれていく本作。

歳を重ねるにつれ、ああこんな日々には戻れない……という重みが辛くもなってはきますが、ぜひそんな心をリフレッシュしきってくれるほどの爽やかさを感じてほしいタイトルです。

まだ先日第3巻が発売したばかりのほやほやな作品なので、ぜひ今のうちにチェックしてみてくださいね。

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コミスペ! 編集部

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