2018.05.17

【日替わりレビュー:木曜日】『血の轍』押見修造

『血の轍』

謎の停滞感がまた怖い3巻

正直、「マザコンマンガ」とか「毒親マンガ」なんてくくりでは話せない、むしろどちらかというと「ホラーマンガ」である。押見修造著の『血の轍』の3巻が今月発売された。

息子に対して異常な執着を見せる母親・静子の異常行動は、前巻でとうとう息子・静一の人生や自我を崩壊させるレベルの“事件”へとつながった。続く3巻では、その事件後の二人の姿が描かれる。いまいちつかみきれない狂気じみた静子の言動と、それに震え上がりながらも決して離れることのできない静一。二人の歪な関係は、巻が進むにつれていよいよ読者の想像を超えた世界観へと突入しているように思える。

泣きながら「どうして…どう…して…」と静子のしたことに対して問いただす静一と、それを穏やかな目で見つめる静子。その後、まったく論理を介さない返答に、静一はさらに混乱して自我が崩壊してしまう。

正直、読んでいて静子の心情は理解不能である。だからこそ怖い。読んでる側からすれば、静一の混乱をそのまま自分も味わっているような嫌な汗の出方をする作品である。

何かが大きく変わったわけでもない、むしろ前巻までの大きな事件の余韻を味わうような3巻である。しかし、むしろあれだけのことがあったにも関わらず、(表向きは)何も変わらない日常が続き、その空気感の中で喘ぎ、苦しみに押しつぶされそうになる静一の姿は、見ていて痛々しい。

これからどうなっていくか、まるで予想がつかないし、つかない自分でありたい気もする。読んでいていい気持ちにはならないけど、この読後感はある意味唯一無二だ。つい、怖いもの見たさでなんども読み返してしまう。
ただ、もはやホラーマンガなので怖いものが苦手な人はちょっと気をつけた方がいいような気がする。

関係ないけど、最近笑ってしまった押切先生のつぶやき。

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この記事を書いた人

園田 もなか

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