2018.05.18
【日替わりレビュー:金曜日】『恋とヒミツの学生寮』アサダニッキ
『恋とヒミツの学生寮』
非日常からもたらされる恋のドキドキを描かせたら、アサダニッキ先生の右に出る者はいない。
間違いないです。自信をもって高らかに宣言してみたのですが、そもそも「非日常からもたらされる恋」ってわりとレアケースなんじゃ……?いや、でもそんなことは気にしません。だってそんな条件を取っ払ったって、アサダニッキ先生の描くラブコメは最高なんですから。
寮ラブコメな良ラブコメ
本作『恋とヒミツの学生寮』はデザート連載作で、現在3巻まで発売されています。恋の舞台となるのはタイトルにもある通り、ラブコメの定番シチュエーション・学生寮。
主人公のあさひは、勉強が苦手な普通科の女の子。そんな彼女が、家を火事で失ったことをきっかけに、特進科の生徒しか入れないエリート専用寮で身分を隠してこっそり暮らすことに。そこでイケメンの秀才・夜風くんと出会い、お互いのヒミツを共有しながら恋を育む、寮ラブコメです。
『青春しょんぼりクラブ』『星上くんはどうかしている』『王子が私をあきらめない』…アサダニッキ作品はどれも面白いですが、甘さで言ったら本作が一番じゃないでしょうか。
このぐらいの非日常が丁度よい
少女マンガで学生寮ものの定番といえば、やはりヒロインが女であることを隠して男子寮に潜入するっていうあれですよ。あの作品とかあの作品のことを言ってます。
あちらは完全なる非日常で、そんな中で繰り広げられるドラマはもちろんドキドキに溢れていて当然なのですが、本作もそこまでのヒミツは抱えずとも、ドキドキっぷりは遜色ないどころか、むしろ甘さで言うとこちらの方が上回っている感すらあるからすごい。
作品によってはシチュエーションに感情描写が負けちゃうことだってあるのですが、アサダニッキ作品の場合はその心配は一切なし。非日常のドキドキの上に、そのまま恋のドキドキが重なり、最高に甘くて刺激的な恋模様を堪能することができるという。
非日常だからこそベタに甘く
なぜか夜な夜な寮を抜け出している夜風くんが、寮に入れずに困っているところを、偶然あさひが助けたことから、二人は急接近。あさひは特進生でない事を、夜風くんはたびたび寮を抜け出していることを、互いに「ヒミツ」として共有し、その仲を深めていきます。
まずは、ヒミツがバレたらどうしようというドキドキが100%。それが、ヒミツの共有という特別感からドキドキ。さらにはそれが、恋心からの胸の高鳴りへと変わっていくわけですが、その過程は非日常的シチュエーションにありながら、用いられる手法はかなりベタ。分かりやすく、甘くて、まあとにかくニヤニヤできるんです。
恋心を隠しておくことのできないあさひの可愛らしさもさることながら、そんな彼女の素直さに影響されて、どんどんその態度が柔らかになっていく夜風くんの攻撃力の上昇っぷりがマジでヤバイ(貧困な語彙)。
1巻途中からニヤニヤシチュは出てくるのですが、もう気づけば終始ニヤニヤしてるんじゃないかってぐらい、3巻にしてその破壊力は過去最高レベルに。
ラブコメ好きの方は、この作品をチェックしない手はありません。自信をもってオススメできる一作でございます。
©アサダニッキ/講談社