2018.05.19
【日替わりレビュー:土曜日】『ライフル・イズ・ビューティフル』サルミアッキ
『ライフル・イズ・ビューティフル』
世にマンガが無数あれば、その題材もまた多種多様。
その中にあって「スポーツとしてのライフル射撃がメインテーマ」かつ「高校の射撃部が舞台」という条件では日本マンガ史上おそらく唯一無二の作品となるのが、「となりのヤングジャンプ」と「ジャンプ+」で同時連載中の『ライフル・イズ・ビューティフル』である。
主人公・小倉ひかりは頭につけた大きなリボンがチャームポイントのおっとりキャラな女の子。
小学生時代からライフル射撃に親しんできた彼女は当然とばかりに射撃部への入部を決め、しっかり者の幼馴染・渋沢泉水(しぶさわいずみ)と共に充実した射撃ライフを……と思ったら、なんと二人が入学した女子高では射撃部が廃部になってしまったというではないか。
なければ自分たちで作るしかない!
部の立ち上げに必要な頭数は四人。ひかりたちは貴重な人材を必死に探しだす。
まずは、中学生のころジュニアライフル大会でひかりと競った姪浜(めいのはま)エリカ。プライドが高く気も強いが、面倒見がよかったり照れ屋なところもあったりとクールすぎないところがかわいい女の子だ。
そこにもうひとり、同じ大会の入賞までいった少女で、口数と表情は少ないものの射撃を楽しむときにふとみせる笑顔がチャーミングな五十嵐雪緒(いがらしゆきお)が加わり、部員を確保した「千鳥高校射撃部」はぎりぎり発足にこぎつけた。
かくして四人の少女たちはライフルを構え、時にワイワイとはしゃぎながら、また時には大会に向けて真剣に、マイナー競技へ青春を捧げる日々を全力で楽しんでいく……。
全体的な骨格は女の子いっぱい部活日常4コママンガのオーソドックスであり、そこに射撃部の基礎知識や“あるある”が詰め込まれる趣向だが、そもそも射撃競技じたいがマイナーなため大多数の読者にはすべてが新鮮に感じられるのが本作の特色である(劇中でも射撃部のマイナーさへの自虐ギャグめいた自己言及がたびたび出てくる)。
銃規制が厳しい日本では、物理弾を使うため免許や煩雑な手続きが必要な「エアライフル」以外に、光線を標的に照射するデジタル式で誰でもすぐに始められる「ビームライフル」がある。劇中で射撃部の面々は当たり前のように電子銃を使って練習や大会競技に臨むのだが、その方面に詳しくない多くの読者からすると「へー、そういうのがあるのか!」と興味深さにあふれる眺めだ。
「ビームライフル」という単語を、ロボット兵器がドンパチするSF戦争物ではなく現代日本の女の子がキャッキャウフフする部活4コマで見ることになろうとは……。
余談だが、スポーツとしてのライフル射撃が題材というだけなら1982年に「月刊少年マガジン」で連載された『パッピュンボーイ』というマンガがある。
『ライフル・イズ・ビューティフル』の連載が始まった当初、ライフル射撃界隈だけでなく80年代月マガ世代もザワっとしたのはご愛敬。
©サルミアッキ/集英社